降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
美冬は倒れ込んでいる男を蹴っ飛ばして仰向けにさせると、馬乗りになって胸ぐらを掴んだ。


「うぐっ!!?」

「美冬!!やめて!!」

「おい、へばってんじゃねーぞ」


ダメだ……私の声すら届かない。

でも、美冬を止められるのは私しかいない。


「美冬!!私は大丈夫だから!!」

「あたしの大切なもんに手ぇ出したこと、後悔させてやるよ」

「美冬……っ!!!!」


今にも男に殴りかかりそうな美冬を止めるべく、私は美冬に駆け寄った……その時だった。


「はいはーい、峯(みね)ちゃ~ん。そこまでだよ~」


おちゃらけた口調なのに、なんだろう……この圧は。

しかも峯ちゃんって……美冬の知り合い……かな。

後ろへ振り向くと、そこにいたのは…………え?

私とおちゃらけた声の主は数秒間見つめ合った。


「「ええっ……!?」」


名前は知らないけどこの人、桐生さんの近くに居た人だ!!


「うえっ!?なんで梓ちゃん!?」


なんて言いつつ、美冬を男からひっぺがしている。


「チッ。離せよ、ストーカー野郎が」

「んもぉ、そういうこと言わないの~。で、この寝っ転がってる奴はなにぃ?」

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