降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
「アンタには関係ない。邪魔、退いてろよ」

「はいはい、そんな怒んないの」

「鬱陶しいっつってんのが分かんねーの?いい加減にしろよ。アンタもぶっ飛ばされたいわけ?」

「ははっ。まあ、やれるもんならやってみなよ~。俺に勝てんの?峯ちゃん」


ニヤッとしながら美冬を見下ろして、あの美冬が何も言い返せず悔しそうにしている。


──── この人、一体何者……?


「で、なんなの?コイツ。峯ちゃんのナニ?」

「あ?別にあたしのどうのこうのって奴じゃねーよ。つーか、触んな」

「だって逃げるでしょ~?」


美冬の肩をガッシリ掴んで、肩を組んでいる。


「んーーっと、てことは……梓ちゃんの方かな?」

「つーかアンタ、なんで梓のこと知ってんのよ」

「ん?ああ……ほら、『俺ヤクザだよ~』って言ったでしょ?俺、桐生組だからぁ~」

「「……え」」


声を揃えた美冬と私。

それを見てケタケタ笑ってる。


「びっくりだよねぇ~。で?この男は?」


ニコニコしてるけど、完全に仕事モードな気がするなぁ……。


「桐生さんには言わないで……ほしいです」

「んーー。実害があったとなると無理かなー」

「そう……ですか……」

「梓ちゃん」

「はい」


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