降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。


──── 美冬に私の気持ち、『桐生さんのことが好き』と伝えると、『だろうね~。いいんじゃなーい?』みたいな軽いノリの美冬に、拍子抜けしたのは言うまでもない。

万が一、海外行きになったとしても、『友情に距離なんて関係ねぇだろ』だってさ。


「てかさ、雫さんに言ったら?」

「……え」

「黙ってんのしんどくね?コソコソすんのもダルいじゃん」

「ま、まぁ……そうだけど。あ、ごめん。何か飲み物……何がいい?」

「ああ、なんか甘いもんで」

「おっけ~」


なんて会話をしながらリビングに居た時だった。

玄関の方からガチャガチャッと物音が聞こえて、私と美冬は目を合わす。

さっきのこともあってか、美冬はすぐ臨戦態勢になって、私を隠すように前に立った。


「こんな時間に訪問者……なわけねぇよな」


ありえない。ここのセキュリティを難なく通り抜けてきたってこと?

緊張と恐怖で心拍数が跳ね上がる。


「梓。どっかに隠れて」

「……い、嫌だ」

「は?」

「私も戦う」

「ったく。黙って守られとけよ」

「美冬がピンチの時、誰が助けるのよ……私しか居ないでしょ」

「はっ、そもそも負けねぇし。舐めんなっつーの。とりあえずちょっと後ろに居てくんない?動きづらいから」

「うん」

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