降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
美冬から数歩後ろへ下がって、役に立つかは不明だけど、吸引力が凄まじいで有名な掃除機を手に取って構えた。


── ガチャッとドアが開いて、そこに居たのは……。


「たっだいまぁ~!!」

「「お母さん/雫さん!?」」

「サップラァイ~ズ!!……って、なによアンタ達。何と戦おうとしてたわけ?」

「「はぁぁぁぁ」」


私と美冬は深いため息を吐いて、お母さんをジトーッとした目で見つめる。


「なによ。嬉しくないわけ?」

「せめて梓には、帰るよってくらい伝えといてくださいよ。ビックリするんで。あ、お邪魔してます」

「それじゃあサプライズになんないでしょ?それにしても美冬……アンタほんっと可愛いわね」


お母さんが突然帰ってくることは過去にもあった。でも、大概が忙しくて帰ってこれないのが当たり前の人だから……。まあ、帰れる時に帰らないとってやつなのかもしれないけど。


「おかえり、お母さん」

「うん。ただいま」

「梓……あのこと、雫さんに話したら?あたしも加勢するし」

「ええ?なんのこと?何か大切な話?」


──── 美冬……ありがたいんだけど、心の準備ってものが全くできてないのよ。

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