降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
お母さんのリアクションに、どう反応していいか分からず固まる私と美冬。


「ちょ、待って。雫さん……どういうこと?」

「誠君ならいいよ~」


──── “誠君”……?


「お母さん……もしかして……桐生さんのこと知ってるの……?」

「会ったのは今日が初めてだけどね?」

「へ……へぇ……」

「実はね?誠君のお母さんと私、お友達なのよ~!」

「「……うぇえ!?」」


美冬と私は全く同じ反応をして、開いた口が塞がらない。

何々、どういうこと!?意味分かんない!!ていうか、そんな偶然ある!?


「このマンションも誠君のお母さんから勧められたのよ?」

「もっと早く言ってよ!!」

「言おうとしたのに梓が『ふーん。へえー』とか興味無さそうだったんだもーん」


──── 確かにそうだったかもしれない。


「で、雫さん」

「ん~?」

「いいんですか?あんだけ“鉄則”だのなんだのって、グチグチうるさかったのに」

「美冬……アンタ嫌な言い方するわね。誠君となれば話は別よ」


・・・・拍子抜けもいいとこだよ、これ。


でも、お母さんがそう言ってくれるのなら、もう迷う必要なんてどこにもない。


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