降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
いや、でも……いつまで経っても整うはずがない。

今言わなかったら、きっと言えずに終わってしまう。

お母さんにも認めてほしい。

桐生さんのことを隠して、コソコソして、桐生さんとの関係を“イケナイこと”にするのは嫌だ。


「お母さん……私、好きな人ができた」

「……うちの“掟”、忘れたとは言わせないわよ」

「分かってる、分かってるけど……もう、止めらんないの。どうしても好きで、諦められない……諦めたくない。……私、桐生さんのことが好きなの!!」


お母さんは荷物をその場に置いて、私の方へ向かってきた。


「ちょっ、雫さん!!」


美冬も私も多分考えていることは同じだと思う。これは……“即、海外へ連行パターン”だって。

慌ててお母さんを止めようとする美冬。


「私、美冬から離れるのも桐生さんから離れることもしたくない。だからと言って、桐生さんへの気持ちを無かったことにするなんて……もうできない」

「梓、約束は守る為にあるの」

「まぁまぁ、雫さん」


──── 世界一重い空気が流れている……と言っても過言ではない雰囲気。


「なぁぁんてねっ!!もういいのよ、それは~」

「「…………」」


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