降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
──── 梅雨の時期が嫌いだった。
その理由の一つは、“私の誕生日”があるから。
お母さんとお父さんが離婚する前、毎年私の誕生日になると大喧嘩して、それがとても辛くて、『誕生日なんて無くなればいいのに』そう思ってた。
絶え間なく降り続ける雨の音と、お母さんとお父さんが言い争う声。
喧嘩の原因は、お母さんが仕事優先で私の誕生日会に間に合わない……というのが理由だった。
私はバリバリのキャリアウーマンなお母さんのことが大好きだったし、確かに寂しいなって思うこともあったけど、お父さんが居てくれたから平気だったのに。
そんなお母さんに耐えきれず、お父さんは家を出ていった。私を引き取るってお父さんは言ってたけど、私がお母さんを選んだ。
美冬は私の誕生日付近になると必ず風邪を引く。だから、当日に祝ってもらったことはない。
『呪われてんな、あたし』とか言って、私の誕生日付近に風邪を引かないよう、初詣の時にお願いしてるらしい。
けど、叶った試しがない。
『チッ。クソ使えねえ神様だなぁ、おい』とか言って、その神社にガンを飛ばす美冬を宥めるのも恒例になっている。
美冬は毎年土下座する勢いで謝ってくるけど、毎年ちゃんと祝ってくれるから、私は十分感謝してる。