降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
で、お母さんが私の誕生日に帰って来れるはずもなく、私は毎年ひとりで誕生日を過ごしていた。


「はぁぁ……」


──── そんなこんなで今年もやってきました。私の誕生日が。


美冬は高熱で倒れて、お母さんは海外でバリバリ働いています。

ま、もう慣れっこっていうか、ただの何気ない1日として過ごす。普通に平日だから学校もあるしね。


・・・・こういう時に限って桐生さんからメッセージも無ければ、電話もないし。


一昨日、仕事が立て込んでるって言ってて、昨日は一度も会ってないし連絡も取り合ってない。

心配になってメッセージ送ったけど、既読にすらならなかった。


「……いない」


ロビーにも、エントランスにも、桐生さんの姿はない。


「雨すご……」


大丈夫かな、桐生さん。


──── 不安が募っていく。


学校へ行くと、『誕生日おめでと~』と声をかけてくれる子達もいて、本当にこれだけでも十分なんだよね。

なのに、ちょっと寂しいと思っちゃうのはきっと、桐生さんの存在が大きいから。


・・・・そもそも桐生さんは、私の誕生日なんて知らない。だって、言ってもないし。だから、知らなくて当然。


< 160 / 164 >

この作品をシェア

pagetop