降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
教室の窓から外を眺めると、涙のようにほんの少しだけ降る雨。

このまま止めばいいんだけど。


───── なんて願いは叶うはずもなく、雨が地面に叩きつけるように激しく降っている。


「ほんっと、ついてないな」


ザーザーと降りしきる雨の中、地面からの跳ね返りで足元がズブ濡れまくりながらも、“もしかしたら、降りしきる雨の中、桐生さんは傘もささずに待っているかもしれない……”そう思って、急いでマンションへ向かった。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……いない……か」


──── 今頃どこかでズブ濡れになってないかな。


「……桐生さん、大丈夫かな……」


何かあったんじゃないかって心配で、不安で……連絡がないことが、こんなにも苦しいだなんて知らなかった。


──── ねえ、桐生さん。


「会いたい」

「── 梓!!」


後ろから私を呼ぶ声が聞こえる。

振り向くと、傘もささずに私のもとへ走ってくる桐生さんの姿。


「桐生さん!!」


私は桐生さんに駆け寄って傘をさした。

元気そうで良かったと、心底ホッとして安堵のため息が出てしまう。


「はぁぁ。もう……いい加減にしないと本当に風邪引きますよ?桐生さん」


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