降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
予想外の返事に、『えぇえっ!?』って大きな声が出そうになったのを必死に押さえた。

てっきり『要らねえ』って言われるかなって思ってたから、当たって砕けろ的な……。


「ちょっと待っててください!!」


彩りやバランスを考えつつ、急いでタッパーに肉じゃがを詰めて、桐生さんのもとへ戻る。


「お待たっ……」


桐生さんが誰かと電話をしていることに気付いて、直ぐ様お口にチャックをした。


「かけ直す」


そう言って電話を終わらせた桐生さん。


「悪い」

「あ、いえいえ。すみません、タイミング悪くて……。あの、これ」


肉じゃがの入ったタッパーを差し出すと、それを受け取りながら、私の頭をポンッと撫でる桐生さん。

顔色ひとつ変えないから、何を思って私の頭に触れているのか、さっぱり分からない。


「ありがとな」

「……いえ、こちらこそ。フルーツありがとうございます」

「さっさと寝ろよ」

「あ、はい。おやすみなさい」

「ん」


──── 本当に掴めない人だな……桐生さん。


それから私と桐生さんは、毎日のようにお裾分けをし合うようになった。


「これって、なんか……」


“お裾分け”っていうより、“物々交換”……的な感じになってない?

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