さよなら、やさしいウソつき

第3話「同窓会の帰り道で」

2時間で同窓会は、お開きとなり、ユキは、いおりと帰ろうとしたが、自宅が反対だったため
断念した。ひとりで帰ろうとしたとき、店の外で「宮島さん、僕が送るよ」と声がした。
声の主は、中島俊哉だった。
「え?仕事は、大丈夫?」
「大丈夫。明日、夜勤なんだ。まぁ、呼び出し覚悟もあるんだけどね。」
「でもこの前のこともあるし・・・」

断ろうとしたが、中島が「警察官として君を自宅まで送らせてほしい」と言われ、お言葉に甘えることにした。
道中、特に会話は、なかったがユキは、気になってたことを聞いた。

「ねぇ、中島君。あの時、なんで私のこと覚えててくれたの?」
「あぁ。あの時か。ちょー恥ずかしいけど、俺・・・・宮島さんのこと」

顔真っ赤にして、照れくさそうにした中島の口から予想外の言葉が出た。

「好きだったんだ。高校時代からずっと。」

「えっ?!」

一瞬、何を言ってるかわからなかったが、あきらかに「好き」という二文字だけははっきり聞こえた。
「本当だよ。宮島さんのことずっと密かに思いをよせていたんだ。でも、俺って意外と照れ臭いとこあるからさ
なかなか告白する勇気出なくて、卒業して、警察学校へ行って、警官になってた。」
「嘘・・・・。私、知らなかった・・・・」
「卒業式だって宮島さんに第2ボタンあげるつもりでいたんだけど、ほかの女子からほしいってうるさくて
仕方なくあげてしまったんだ。それは、今でも悔くて後悔してる。もっと早く告白して、第2ボタンだって
あげるヤツいるからってはっきり言えたのに。」

中島は、ずっとユキのこと好きだったことを告白した。
ユキは、開いた口がふさがらないかのようにぽかーんとした。

「返事は、急がないから。これ、僕のメッセージアカウントと電話番号。ゆっくり休んで、仕事頑張ってね!」
「待って!あの、私、地味で何のとりえもないのにずっと覚えててくれて、ありがとう。」
「ううん。僕は、宮島さんの笑った顔がすごくかわいくて、好きだった。僕の想いが通じて、初恋の人と再会できたんだ。
おやすみ!」

中島は、ユキが自宅マンションまで送り届けて、帰宅した。そのあとのユキは、中島からの告白と思いがけない言葉の
連続で緊張して、あまり眠れなかった。

次の日、出社すると、まだ五十嵐俊介しか出社してなかった。

「おはようございます。」
「おはよう。宮島さん。昨日、同窓会どうだった?」
「楽しかったです。久しぶりに友人たちに会えて、リフレッシュできたという感じです。」
「よかった。疲れて、仕事ミスしないように僕からもしっかりサポートしてあげるからね。」

五十嵐は、朝から爽やかな笑顔でユキに告げた。ユキは、五十嵐の爽やかな笑顔にいつもときめいていた。
きっとモテるんだろうな。と考えてしまうほどである。

「あの、部長や課長は?」
「あぁ、早朝会議とかで今、席をはずしているよ。宮島さん、部長が来る前にこの資料のコピーをお願いできるかな?」
「わかりました!」

ユキは、五十嵐から頼まれた書類コピーをする。コピーも前より上手にできるようになったため、紙詰まり起こしたり
紙のサイズを間違えたり、文字がズレたりしなくなった。
もう一人前の社会人だと感じるところはあるが、他人から見たらまだ1年目の新人である。

そして、数十分後には、ほかの社員や斎藤由奈も出社してきた。

「おはよう~。もう朝から電車遅延とか最悪だった~。」
「おはようございます!由奈先輩」
「おはよう。ユキちゃん!あら、書類コピーしてくれたの?ありがとう~。」

由奈は「助かる~。」と言って、ユキにお礼の気持ち籠った飴玉をくれた。

「ありがとうございます。先輩。」
「いいのよ。出社したらコピーや掃除しなきゃって思ってたのにやらせてごめんね。」

ユキは、「大丈夫です。」と言って、午前中の仕事をこなしていった。
昼休みになり、由奈にランチ誘われたが、「今日は、弁当作ってきたので」と丁重に断った。
由奈は、「弁当なんて偉いね!」と言って、ほかの同僚誘って、ランチに行ってしまった。

「あれ?宮島さん、今日は、斎藤と一緒にランチ行かないの?」
「ええ。今日は、弁当作ってきたので」

五十嵐も今日は、オフィスで食べるのだろうか?コンビニ弁当とお茶を持っていた。
「すごいな。宮島さんって家庭的なんだね。」
「いいえ。私は、簡単なものしか作れませんから」
「一緒に食べてもいいかな?」

ユキは「いいですよ」と笑顔で返事し、五十嵐と一緒に食べることに。

「五十嵐さん、なんでいつも私のこと気にかけてくれるんですか?私より魅力的な女性社員いるのに」
「あはは。素直に聞いてくれるね。今年の新入社員で女性は、宮島さんだけじゃない。慣れないこと多くて
戸惑うから少しでも遠回りにサポートしてあげないとなって思ってる。もちろんほかの新入社員のサポートしてるよ。」

「ひいきはしてないよ」と笑いながら言う。
ユキは、謙虚で誠実で優しい五十嵐にますますひかれていった。
でも高校のクラスメイトだった中島の返事もしなくてはと思いは、揺れていた。

好きなのは五十嵐先輩。告白してくれたのは中島俊哉くん。

ユキは、どちらを選べばいいのだろうかと思い悩む。相談できる相手と言えば斎藤由奈先輩か親友のいおり。
仕事が終わったら、相談しようと思いとどまったユキだった。

仕事が終わり、定時になった時、ユキは、由奈に思いきって声をかけた。
「あの。由奈先輩!今夜、一緒に夕飯、、、いいですか?」
「え?大丈夫よ。どうしたの?」
「ちょっと相談にのってもらいことがありまして。」
「わかった。かわいい後輩の悩みを聞いてあげる!おすすめのパスタ屋さんあるんだけど、そこに行きましょう。
そこならユキちゃんの自宅は、近いし、遅くなっても大丈夫なはずよ。」

優しい。わざわざ私の帰りまで気を使ってもらって。
ユキは、将来、人を思いやることのできる先輩になりたいとますます由奈にあこがれを抱いたのだった。

由奈が連れてきてくれたパスタ屋さんは、女性に大人気なおしゃれな雰囲気のお店だった。
本場イタリアの人が日本でパスタ屋さんをやっていると聞いて、さっそく話題になり、毎日、満席御礼の日々だったらしい。
「ここ、ペペロンチーノやボンゴレが絶品なんですって。もちろんミートソースもおいしいんだけど、私のおすすめは、
ボンゴレ。あさりの風味がしっかりしてて、おいしいのよ」
「そうなんですか。私、ボンゴレにしようかな。」
「OK!ボンゴレ二つ」

店員のお姉さんが「かしこまりました。」と言って、厨房まで行った。

「ねぇねぇ。相談って何?恋のお悩み?」

ユキは、飲んでた水が気管に入って、むせてしまった。
「ゴホゴホッ!なんで、わかったんですか?」
「ユキちゃんの顔。あきらかに顔が真っ赤で、これは恋のお悩みだなぁってわかっちゃった。」

気管が落ち着いて、ようやく話せるようになったユキは、「そうなんです」と素直に認めた。

「あの、同窓会でずっとずっと好きだったと言ってくれた男性がいるんです。」
「へぇ~。ユキちゃん、モテモテ!」
「それで、メッセージアカウントと電話番号をもらって、さっそく登録したんです。告白の返事をいつでも
聞けるようにって」
「そっか~。それで?ユキちゃんは、どうしたいの?お付き合いしたい?」
「わからないんです。私にもほかに思いを寄せる人がいて・・・・」
「その相手が五十嵐君だというわけだ」

ユキは、再び図星を衝かれた。

「そう・・・です。」
「私から言えることはね、ユキちゃんが素直で正直でいることだよ。あまりに中途半端な気持ちでいると
同級生のボーイフレンドも五十嵐君もかわいそうだよ。だから、ユキちゃんがお付き合いしたいと思う相手と
付き合うのがいいよ。」

由奈のアドバイスを聞いて、ユキは、スマホの画面を付けたのだった。




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