本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第7章 12 過去の記憶
私は夢を見ていた。それはまだ幸せだったあの頃の夢を―
「「「かんぱーい!」」」」
私は亮平とお姉ちゃんと3人で家の近所の居酒屋にお酒を飲みに来ていた。お座敷席に私とお姉ちゃん、そして向かい側の席に亮平が座っている。
3人で居酒屋にお酒を飲みに来るなんて初めての事だった。だって今夜は特別なお祝いの日だから。私と亮平が就職の内定を貰えたのでお姉ちゃんの提案で3人で居酒屋でお祝いをすることになったのだ。居酒屋を提案したのはお姉ちゃん。お姉ちゃんの事が昔から大好きだった亮平は当然のように喜んで居酒屋に行く事を即答したのは言うまでも無かった。
3人で乾杯をした後、お姉ちゃんが口を開いた。
「それにしても亮平君はすごいわね。行員になるとは思わなかったわ」
「ええ。商社に勤めている忍さんに負けないように就職活動頑張ったんですよ!」
亮平は得意げに言うと、今度は私を見た。
「それで、鈴音は何処の旅行会社だったっけ?」
亮平はおつまみの枝豆を口に入れながら尋ねてきた。お通しの漬物に箸をつけながら私は答えた。
「私?私は『ツアージャパン』って会社だよ?」
「う~ん…そんな会社聞いたことがないけどなぁ…」
「仕方ないよ、だってまだ設立して5年目の小さな会社だからね。でもきっと今に大きな会社になって、旅行するなら『ツアージャパン』って言わせてみせるんだからね」
胸を反らせて言うとお姉ちゃんが笑う。
「フフフフ…。鈴音ちゃん、まるでどこかのCMみたいなセリフね?」
「え~そうかなぁ…」
私は言いながら梅サワーをごくりと飲んだ。
「まあいいか、ほら鈴音。お前、焼きおにぎり好きだっただろう?注文しようか?」
亮平がメニューを私に見せながら尋ねてくる。
「あ~本当だ。おいしそう…でも2個乗っていて一皿かぁ…個はさすがに多いかな?」
「あ、それなら俺が1個食ってやるよ。なら食べられるかな?」
「うん、そうする」
「よし、頼もうぜっ!」
すると、そこへお姉ちゃんが口を挟んできた。
「あら、私も焼きおにぎり食べたかったな」
「なら、もう1皿頼みますか?」
しかし、亮平の言葉にお姉ちゃんが首を振る。
「あら、それじゃ注文し過ぎじゃないの?」
「俺が2個食べますよ」
しかし亮平の言葉にお姉ちゃんが言った。
「でも…それじゃ食べ過ぎになっちゃうわ。だってここのお店の焼きおにぎりはご飯1膳分もある大きな焼きおにぎりだから…。ねえ、鈴音ちゃん」
突然お姉ちゃんが私を振り返った。
「何?」
「鈴音ちゃんは山芋のチーズ焼き…好きだったわよね?」
「うん、好きだよ。」
「そう、ならお姉ちゃんが焼きおにぎり貰っていい?」
う~ん…焼きおにぎり食べたかったけど…山芋のチーズ焼きも捨てがたい。でもお姉ちゃんが食べたいっていうなら、別にいいか…。だから私は返事をした。
「うん。いいよ」
「そう、なら決まりね。亮平君、私と焼きおにぎり…分け合いましょう?」
「お待たせいたしました―」
男性店員さんが焼きおにぎりを持って、私たちのテーブル席にやってきた。お皿の上にはカリッと焼かれてしょうゆを塗られた焼きおにぎりが湯気をたてている。
ゴクリ
おいしそう…。そんな私に気付いたのか、亮平が尋ねてきた。
「鈴音。少し食べるか?」
「え?いいの?」
「ああ。いいぞ」
そう言って亮平が焼きおにぎりを少し分けてくれようとした時…。
「駄目よ。亮平君」
お姉ちゃんがポツリと言った。
「「え?」」
私と亮平はお姉ちゃんを見た。
「鈴音ちゃん…別メニューを取ってるんだから亮平君のを貰ったら悪いじゃない。ねぇ?鈴音ちゃん」
う~ん。確かに言われてみればそうかも…。
「うん。そうだね。亮平、私はいいから1人で食べてよ」
「そうか?悪いな…」
そしてお姉ちゃんと亮平は2人で焼きおにぎりを食べ始めている傍で私はお酒を飲み続けた――
3人で飲み会を初めて2時間ほど経過した頃…。お姉ちゃんがウトウトしている亮平に声をかけた。
「あら?亮平君、眠そうね。」
「うん、それじゃそろそろ帰ろうか?その前に私お手洗いに行ってくるね」
「ええ、行ってらっしゃい」
そして私はお手洗いに行って、少したって戻てくると…。
「あれ…?いない…?」
さっきまでこの席にいたお姉ちゃんと亮平の姿が無い。しかもよく見れば靴や上着、カバンも消えている。訳が分からず立ち尽くしていると店員さんがやってきた。
「あ、お連れの方ならもうお会計を済ませて帰られましたよ?」
「え…?」
私はその言葉に驚き、急いで店を後にし、小走りに2人の後を追いかけて、足を止めた。
「あ…」
そこにはお姉ちゃんと亮平が肩を組んで楽し気に歩いていた――
****
「…」
朝の光で目覚めた私はポツリと呟いた。
「そうだ…お姉ちゃんは以前から少しだけ、私に意地悪していたんだ…」
気付かなかった。
ううん、気づかないふりを…私は今までしていたんだ。
そのことに気づき、私の目から涙が頬を伝って流れていった――
「「「かんぱーい!」」」」
私は亮平とお姉ちゃんと3人で家の近所の居酒屋にお酒を飲みに来ていた。お座敷席に私とお姉ちゃん、そして向かい側の席に亮平が座っている。
3人で居酒屋にお酒を飲みに来るなんて初めての事だった。だって今夜は特別なお祝いの日だから。私と亮平が就職の内定を貰えたのでお姉ちゃんの提案で3人で居酒屋でお祝いをすることになったのだ。居酒屋を提案したのはお姉ちゃん。お姉ちゃんの事が昔から大好きだった亮平は当然のように喜んで居酒屋に行く事を即答したのは言うまでも無かった。
3人で乾杯をした後、お姉ちゃんが口を開いた。
「それにしても亮平君はすごいわね。行員になるとは思わなかったわ」
「ええ。商社に勤めている忍さんに負けないように就職活動頑張ったんですよ!」
亮平は得意げに言うと、今度は私を見た。
「それで、鈴音は何処の旅行会社だったっけ?」
亮平はおつまみの枝豆を口に入れながら尋ねてきた。お通しの漬物に箸をつけながら私は答えた。
「私?私は『ツアージャパン』って会社だよ?」
「う~ん…そんな会社聞いたことがないけどなぁ…」
「仕方ないよ、だってまだ設立して5年目の小さな会社だからね。でもきっと今に大きな会社になって、旅行するなら『ツアージャパン』って言わせてみせるんだからね」
胸を反らせて言うとお姉ちゃんが笑う。
「フフフフ…。鈴音ちゃん、まるでどこかのCMみたいなセリフね?」
「え~そうかなぁ…」
私は言いながら梅サワーをごくりと飲んだ。
「まあいいか、ほら鈴音。お前、焼きおにぎり好きだっただろう?注文しようか?」
亮平がメニューを私に見せながら尋ねてくる。
「あ~本当だ。おいしそう…でも2個乗っていて一皿かぁ…個はさすがに多いかな?」
「あ、それなら俺が1個食ってやるよ。なら食べられるかな?」
「うん、そうする」
「よし、頼もうぜっ!」
すると、そこへお姉ちゃんが口を挟んできた。
「あら、私も焼きおにぎり食べたかったな」
「なら、もう1皿頼みますか?」
しかし、亮平の言葉にお姉ちゃんが首を振る。
「あら、それじゃ注文し過ぎじゃないの?」
「俺が2個食べますよ」
しかし亮平の言葉にお姉ちゃんが言った。
「でも…それじゃ食べ過ぎになっちゃうわ。だってここのお店の焼きおにぎりはご飯1膳分もある大きな焼きおにぎりだから…。ねえ、鈴音ちゃん」
突然お姉ちゃんが私を振り返った。
「何?」
「鈴音ちゃんは山芋のチーズ焼き…好きだったわよね?」
「うん、好きだよ。」
「そう、ならお姉ちゃんが焼きおにぎり貰っていい?」
う~ん…焼きおにぎり食べたかったけど…山芋のチーズ焼きも捨てがたい。でもお姉ちゃんが食べたいっていうなら、別にいいか…。だから私は返事をした。
「うん。いいよ」
「そう、なら決まりね。亮平君、私と焼きおにぎり…分け合いましょう?」
「お待たせいたしました―」
男性店員さんが焼きおにぎりを持って、私たちのテーブル席にやってきた。お皿の上にはカリッと焼かれてしょうゆを塗られた焼きおにぎりが湯気をたてている。
ゴクリ
おいしそう…。そんな私に気付いたのか、亮平が尋ねてきた。
「鈴音。少し食べるか?」
「え?いいの?」
「ああ。いいぞ」
そう言って亮平が焼きおにぎりを少し分けてくれようとした時…。
「駄目よ。亮平君」
お姉ちゃんがポツリと言った。
「「え?」」
私と亮平はお姉ちゃんを見た。
「鈴音ちゃん…別メニューを取ってるんだから亮平君のを貰ったら悪いじゃない。ねぇ?鈴音ちゃん」
う~ん。確かに言われてみればそうかも…。
「うん。そうだね。亮平、私はいいから1人で食べてよ」
「そうか?悪いな…」
そしてお姉ちゃんと亮平は2人で焼きおにぎりを食べ始めている傍で私はお酒を飲み続けた――
3人で飲み会を初めて2時間ほど経過した頃…。お姉ちゃんがウトウトしている亮平に声をかけた。
「あら?亮平君、眠そうね。」
「うん、それじゃそろそろ帰ろうか?その前に私お手洗いに行ってくるね」
「ええ、行ってらっしゃい」
そして私はお手洗いに行って、少したって戻てくると…。
「あれ…?いない…?」
さっきまでこの席にいたお姉ちゃんと亮平の姿が無い。しかもよく見れば靴や上着、カバンも消えている。訳が分からず立ち尽くしていると店員さんがやってきた。
「あ、お連れの方ならもうお会計を済ませて帰られましたよ?」
「え…?」
私はその言葉に驚き、急いで店を後にし、小走りに2人の後を追いかけて、足を止めた。
「あ…」
そこにはお姉ちゃんと亮平が肩を組んで楽し気に歩いていた――
****
「…」
朝の光で目覚めた私はポツリと呟いた。
「そうだ…お姉ちゃんは以前から少しだけ、私に意地悪していたんだ…」
気付かなかった。
ううん、気づかないふりを…私は今までしていたんだ。
そのことに気づき、私の目から涙が頬を伝って流れていった――