二週間の偽装彼氏~義兄の兄に溺愛されています~
「そう……ですよね。そうだと思います」

 だから自分でも肯定する。

 声が震えそうなのはなんとか堪えた。

 次に、バッグに手をかける。

 ホットティーの缶は、目の前の柵に置いておいた。

 肩からかけているのは、アイボリーの通勤バッグ。

 A4書類が入る、大きめサイズだ。

 そこから麻耶に押しつけられた、例の綺麗な封筒を取り出した。

「……これ。下岡さんに、……渡されたんです」

 本当は捨ててしまいたいと思うものだけど、我慢する。

 颯士に向かって差し出した。

 この行動は「見てほしい」という意味なのは伝わったようだ。

 颯士は同じように缶を置いてから、丁寧に「見てもいいの?」と受け取った。

 そして封筒を開く。

 中身に目を走らせて……顔が強張った。

「こ、婚約パーティーするんですって。それで……招待を……」

 さすがに颯士のほうは見られなかった。

 無理やり明るくした声で、絞り出す。

 そうでもしないと涙が際限なく出てきそうだった。

「……そんな……」

 ぼんやりと颯士が呟くのが聞こえる。

 実際、絶句するような内容と行動だ。

 彼女だった女性を捨てた冬治。

 さらに、彼氏を略奪した麻耶。

 そんな仕打ちをしてきた二人から、婚約パーティーへのお誘いなんて。

 明らかに嫌がらせだ。
< 21 / 68 >

この作品をシェア

pagetop