エリート外交官は溢れる愛をもう隠さない~プラトニックな関係はここまでです~
それは、高校生になったばかりの春の、ある雨の日だった。
風に乗った雨粒で濡れた制服の肩を気にしながら、私は玄関ポーチで折り畳み傘を閉じる。
ドアにカードキーをかざしたら、なぜか逆にロックされてしまった。私は眉根を寄せて再度キーをかざし、今度こそハンドルを引いてドアを開ける。
見るとやはり、玄関には雨で濡れたのだろう履き古した兄のスニーカーが乱雑に鎮座していて。
『ただいまぁ。お兄ちゃん、また玄関の鍵開けっ放しで……』
傘立てに傘を引っかけ、小言を口にしながらリビングへと向かった私は。
『あ、』
上半身裸で肩にタオルをかけた、水も滴る見知らぬイケメンと遭遇したのだった。
『……え……』
思わず、硬直する私。
だれ。不審者?
ああでも、お兄ちゃんの靴があったなら知り合いとか──。
『すみません、お邪魔してます』
ぺこ、と彼が軽く頭を下げた。
礼儀正しいイケメンだ。半裸だけど。でもなんというか、佇まいがとても上品な気がする。ただ立っているだけなのに。
というかもう、水に濡れた半裸イケメンの破壊力に逃げ出したくなってきた。
上半身くらいなら兄で見慣れていたはずなのに、衝撃が全然違う。“おとこのひと”の身体を目の当たりにして、羞恥でいっぱいになる。
『朔夜〜、これ着替え……あ、陽咲おかえりー』
『お兄ちゃん……』
呑気に話しながらリビングへとやってきた兄に、恨めしいを通り越した、情けなくすがる眼差しを思わず向けた。
『あ、こいつ、同じ大学の秋月朔夜。ふたりして濡れたからウチに避難してきたんだ』
当の本人はのんびりと話して、そんなお兄ちゃんを“アキヅキさん”はちょっと呆れたような顔で一瞥してから私へと向き直った。
『初対面が、こんな恰好でごめん。すぐお暇するから──』
と、話の途中で彼が、くしゅんとくしゃみをした。それを目の当たりにして私は慌てる。
『あ、寒いですよね……!? もうお兄ちゃん、あったかい飲み物とか出してあげなよ! 風邪ひいちゃうでしょ!』
『んー、コーヒーの粉ってどこだっけ?』
『うそでしょお兄ちゃん……!』
騒がしくそんなやり取りをしながらキッチンへと向かおうとした私たちのうしろから、ふっ、と小さくこぼれた笑い声。
思わず振り向いた私は、口もとに片手をあてやわらかい眼差しでこちらを見ていた彼と目が合う。
『仲良いな、春日兄妹』
穏やかなその言葉になんだか無性に恥ずかしくなって、頬が熱くなる私。
これが、私と朔夜さんとの出会いだった。
風に乗った雨粒で濡れた制服の肩を気にしながら、私は玄関ポーチで折り畳み傘を閉じる。
ドアにカードキーをかざしたら、なぜか逆にロックされてしまった。私は眉根を寄せて再度キーをかざし、今度こそハンドルを引いてドアを開ける。
見るとやはり、玄関には雨で濡れたのだろう履き古した兄のスニーカーが乱雑に鎮座していて。
『ただいまぁ。お兄ちゃん、また玄関の鍵開けっ放しで……』
傘立てに傘を引っかけ、小言を口にしながらリビングへと向かった私は。
『あ、』
上半身裸で肩にタオルをかけた、水も滴る見知らぬイケメンと遭遇したのだった。
『……え……』
思わず、硬直する私。
だれ。不審者?
ああでも、お兄ちゃんの靴があったなら知り合いとか──。
『すみません、お邪魔してます』
ぺこ、と彼が軽く頭を下げた。
礼儀正しいイケメンだ。半裸だけど。でもなんというか、佇まいがとても上品な気がする。ただ立っているだけなのに。
というかもう、水に濡れた半裸イケメンの破壊力に逃げ出したくなってきた。
上半身くらいなら兄で見慣れていたはずなのに、衝撃が全然違う。“おとこのひと”の身体を目の当たりにして、羞恥でいっぱいになる。
『朔夜〜、これ着替え……あ、陽咲おかえりー』
『お兄ちゃん……』
呑気に話しながらリビングへとやってきた兄に、恨めしいを通り越した、情けなくすがる眼差しを思わず向けた。
『あ、こいつ、同じ大学の秋月朔夜。ふたりして濡れたからウチに避難してきたんだ』
当の本人はのんびりと話して、そんなお兄ちゃんを“アキヅキさん”はちょっと呆れたような顔で一瞥してから私へと向き直った。
『初対面が、こんな恰好でごめん。すぐお暇するから──』
と、話の途中で彼が、くしゅんとくしゃみをした。それを目の当たりにして私は慌てる。
『あ、寒いですよね……!? もうお兄ちゃん、あったかい飲み物とか出してあげなよ! 風邪ひいちゃうでしょ!』
『んー、コーヒーの粉ってどこだっけ?』
『うそでしょお兄ちゃん……!』
騒がしくそんなやり取りをしながらキッチンへと向かおうとした私たちのうしろから、ふっ、と小さくこぼれた笑い声。
思わず振り向いた私は、口もとに片手をあてやわらかい眼差しでこちらを見ていた彼と目が合う。
『仲良いな、春日兄妹』
穏やかなその言葉になんだか無性に恥ずかしくなって、頬が熱くなる私。
これが、私と朔夜さんとの出会いだった。