エリート外交官は溢れる愛をもう隠さない~プラトニックな関係はここまでです~
「美味い」


 顔を洗って着替えたら、だいぶ目が冴えたらしい。
 朔夜さんは先ほどよりシャンとした佇まいで、私の作った朝食を食べてくれている。


「良かったです。味付け、濃かったりしませんか?」
「ちょうどいい。美味い」


 返した彼が、ふわりと微笑む。

 ……やっぱりまだ少し、眠いのかも。だって朔夜さんのこんなに緩んだ無防備な笑顔、珍しい……。

 ドキドキしながら、だし巻き玉子を口に入れた。

 そのまま無心で咀嚼していたら、朔夜さんがじっとこちらを注視していることに気づいてうろたえる。


「あの、私の顔に何かついてますか……?」


 嚥下してからおずおずと尋ねると、彼はまたやわらかく笑って答えた。


「いや。なんでもない」


 あっさり言って、また朔夜さんは黙々と目の前の食事を平らげ始める。

 ……『なんでもない』と言われてしまえば、これ以上こちらから追及することはできないのだけれど……。

 でもそういえば朔夜さんは昔から、私が食べている姿をじっと見つめていることが多かった気がする。
 もしかしてあれは……大食いな私が食事をしている姿がおもしろい、とか?

 そうだとしたら、恥ずかしい。……私、朔夜さんに珍獣のように思われているのだろうか。


「陽咲、顔赤くないか? やっぱり熱……」
「なんでも、ありません……!」


 先ほどの彼と同じ言葉を返しつつ、私は過去の行いを思い出して悶えるのだった。
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