エリート外交官は溢れる愛をもう隠さない~プラトニックな関係はここまでです~
「他に、何か買いたいものはないか?」


 ドラッグストアを出て車に戻ると、朔夜さんが荷物をトランクに入れながら尋ねてくる。

 隣に立つ私は少し考えて、首を横に振った。


「いえ、もう特には……ありがとうございます、朔夜さん」


 朝食を終えて少し休憩してから、私たちは日用品の買い出しに出かけた。
 朔夜さんは車を出してくれて、私の細々とした買い物に嫌な顔ひとつせず付き合ってくれている。
 改めて、優しいひとだなあとしみじみ思う。

 運転席に座った彼が、シートベルトをした私を確認して意味ありげに微笑んだ。


「次は俺の用事にも付き合ってくれるか?」


 もちろん、という言葉以外に、私が持つ答えはない。

 そうしてたどり着いたのは、有名なヨーロッパ系ファッションブランドの名前が掲げられた店舗だった。

 スタイリッシュな外観のその店に堂々と入っていく朔夜さんの斜めうしろを、少し気後れしながらついていく。

 このブランドはメンズ・レディスの服だけでなく靴やバッグ、香水なども取り揃えているから、彼も何か欲しいものがあるのだろう。

 そんなことを考えつつ黙って朔夜さんの後を歩いていたら、不意に彼が近くにいた女性の店員に話しかけた。


「すみません、彼女に似合う服を……そうだな、ワンピースをいくつか選んでもらえますか?」
「えっ」


 彼女に、と言って私を手で指し示した朔夜さんの言動に驚き、声をあげる。

 店員は「かしこまりました」とにこやかに答え、さっそく店内の商品を吟味し始めた。
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