エリート外交官は溢れる愛をもう隠さない~プラトニックな関係はここまでです~
「専務、そろそろ本気で時間ですよ」
「……ああ」


 朔夜さんが答え、ふたりが玄関に向かうのを私も追いかける。


「それじゃあ陽咲、行ってくる。戸締まりには気をつけて」
「はい」
「陽咲さん、紅茶とクッキーご馳走さまでした」
「いえいえ」


 朔夜さんと田宮さんを送り出し、家の中には私ひとりだけになった。

 ふらふらとリビングに戻って、私はローテーブルに置きっぱなしの食器を片付ける前にぼすんとソファに沈み込む。

 フォーマルな服を着た朔夜さん……とても似合っていて、着慣れていて、恰好良かったな。
 改めて……自分とは違う世界で生きているひとだなあと、実感してしまった。

 当たり前のことなのに。こうやってショックを受けることすら、今さらなのに。

 あんなに素敵なひとと知り合いで、しかも一緒に住んでいるだなんて……本当に、奇跡みたいなことなんだ。


『なら、きみがパートナーとして一緒に出てくれるか?』


 朔夜さんにああ言われたとき。着飾った彼の隣に立つ自分の姿が、上手く想像できなかった。

 それだけ、彼と私では釣り合っていないということ。

 ……なんて。朔夜さんは私のことを妹みたいにしか思ってないんだから、こんなふうに考えることすらおこがましいんだけど。

 思考を切り替えるように、ぺち、と自分の両頬を手のひらで軽く叩く。

 そうして私は、ソファから立ち上がった。
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