エリート外交官は溢れる愛をもう隠さない~プラトニックな関係はここまでです~
「陽葵は頑なだったけど藤嶋さんもめげなかったし、俺の方からも『陽咲だってもういい大人なんだから』ってしつこく言い聞かせたら、ようやく折れて付き合い始めたんだ。アイツが昔から藤嶋さんに惚れてるのはわかりきってたからな」
「ふふ。だから私もずっと諦められなかったの」


 笑みをこぼす彼女につられ、私も笑った。

 長い両片想いを経て、ようやく恋人になったふたり。

 でも……ほんの三ヶ月ほどで、その幸せは永遠に失われてしまった。


「陽咲ちゃんと顔を合わせたのは、あの葬儀のときが初めてだったけど……ずっと陽葵くんからあなたの話は聞いていたから、勝手に私、あなたのことを妹みたいに思っていたの」


 驚く私に、藤嶋さんは涙の浮かぶ瞳で続ける。


「……それなのに……あなたが大変なときに、そばにいて支えてあげられなくてごめんなさい。私は、私の悲しみを優先させてしまった。あなたが、一番大変だったはずなのに……」
「そんなこと、ないです……!」


 思わず大きな声が出て、藤嶋さんが目を丸くする。

 声が大きくなってしまったことを恥じたのは一瞬で、私は勢いのまま続けた。


「藤嶋さんには、私が知らないお兄ちゃんとの思い出がたくさんあったと思います。悲しみの深さとか、そういうのは、比べることじゃないです」
「陽咲ちゃん……」
「私、お兄ちゃんに藤嶋さんみたいな素敵な恋人がいたって知られて、すごくうれしいです。今日来てくれて、本当に、ありがとうございます」


 そう言って私が笑うと、藤嶋さんも笑みを見せてくれる。

 そこで私はふと思い出すことがあって、気づけば彼女に尋ねていた。


「あの、藤嶋さん。もしかして、少し前……お兄ちゃんが亡くなってから今日までの間に、誕生日があったりしましたか?」
「え? ええ、私の誕生日は、九月の終わりだったけど」
「やっぱり……! ちょっと待っていてください!」
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