エリート外交官は溢れる愛をもう隠さない~プラトニックな関係はここまでです~
「ねぇ陽咲ちゃん、一時帰国したときにでも、また私と会ってくれる?」
「はい、よろこんで! 私も藤嶋さんと、お兄ちゃんの話がしたいです」
「うれしい。連絡先交換しましょ」


 キャッキャとスマホを出し合う私たちの傍らで、朔夜さんはどこか気まずそうに立っている。完全に家主と朔夜さんそっちのけで盛り上がってしまっていた。


「あ、そのときは秋月くんも混ぜてあげてもいいわよ」
「……お気遣いどうも」


 サバサバした藤嶋さんの勢いに押され気味の朔夜さんの様子は、私が初めて見る表情だ。なんだかおもしろくて、うれしい。


「またね陽咲ちゃん、秋月くん。ふたりとも元気で」
「藤嶋さんも、アメリカで身体に気をつけてがんばってください」
「藤嶋さんならうまくやれるよ」


 朔夜さんが、いつの間にかタクシーを呼んでくれていたらしい。マンションの前まで見送りに出た私たちに、後部座席の窓を開けた藤嶋さんが晴れやかな笑顔を見せてくれた。


「本当にありがとう、ふたりとも。あなたたちも仲良くね!」


 明るいそんな声を残して、彼女の乗ったタクシーは夜闇の中を走り去っていく。

 最後のセリフ……なんだか、藤嶋さんにはなにか勘違いされていたような気がする。

 けれどそれを話題に出すことはできず、かといって朔夜さんと目を合わせるのも恥ずかしくて、ただ小さくなっていくタクシーを見つめていた。


「……朔夜さん。藤嶋さんと会わせてくれて、ありがとうございました」


 部屋に戻ってから、私は改めてお礼を伝える。

 自室で部屋着に着替えてきた朔夜さんが、キッチンに立つ私のそばまでやって来てやわらかく笑う。
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