冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
『電車で見かけたら目で追うくらい、バスケしててもコートの隅の陽波が気になって仕方ないくらい、あいつにとって陽波はずっと特別なんだよ』
だからすぐに私のピンチに気づくんだって、志月は言った。

『それに俺も、陽波に想われてる架月がうらやましくて意地悪してたとこあるし』
『え?』

『母さんが俺を選んだんじゃなくて、〝架月は長男だから連れて行くな〟って父さんに強く言われて連れて行けなかったんだ』
志月が眉を下げて言う。
『俺が父さんに選ばれなかったんだよ。ずっと知ってたのに教えなかった』

『選ばれるとか選ばれないとか、そんなんじゃないよ』
首を振って否定する私の言葉を、志月は意思の読めない笑顔で聞いていた。

『もう一つ、あいつに伝言』



「『もう陽波を泣かすな』って」

「……それは無理」
架月はため息交じりの苦笑い。

「だってもう泣いてんじゃん」
「だって……」

架月に優しく抱きしめられる。
志月の優しさと、またこの温もりを感じられる日が来たことが信じられなくて、涙が溢れる。

「今までの分まで大事にする。もう、うれしいこと以外で泣かせない」
また、涙がこみ上げる。

「ねえ架月」
「ん?」

「今日、一緒に帰ろ」

fin.
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