憂いの月
「...それは興味深いな」
「知らを切らすでない。我も尋ねるべきでない、でも...諒、」
「観、俺はその話を──」
「──...一族の恨みと、未だお考えなのですか?」
この男の愚かな放火命令が、火事が誰の仕業か...既に外に漏れていると分からないのだろうか。
再び黙り込むのは、数年ぶりの再会には苦しいものだ。
沈黙を破ったのは男の口であった。
「...──宴を開こう。せっかく観子と芳生殿...そして奥方が来たのだから」
「......素晴らしいお心遣い、有難き幸せに存じます。是非」
「では、酉の刻に」
話を逸らすほど答えたくないことを問いただしても無駄かと、諦めることにした。
それにしても、宴だと。
入内、謁見、宴。
都といえど、成人したといえど...社交は初めてである。
芳生に許しを得ねば。
諒成が立つ気配を感じた。
「一族ではなく...俺一存の仇である。あれがなければ、俺は...」
───この座につくこともなかったであろう...
小さく呟き、諒成は几帳の向こうへと姿を消した。