極上の男を買いました~初対面から育む溺愛の味~
 さっきまで笑っていた彼が一気に真剣な表情になったので思わずドキリと胸が跳ねて息を呑む。

「だから、どうしてもってならプロを買った方がいい」
「……」
「無理して経験を積む必要はないと思うけど、無差別な誰かと、ならお金で男を買おう」
「…………、は?」
「お金で買った相手なら後腐れもないしね。相手に何か言う権利を与えるな、諭吉で殴るんだ」
「………………はぁ……」

“緊張して損した”

 というか、ドキリとした私の鼓動を返せ。

 続けられた余りにも酷いアドバイスに、おちょくられているのだと感じた私は益々苛立つ。
 結婚を考えた男はあんなだったし、そしてアドバイスと称して知らない男にはからかわれている。

 そう考えると無性に腹が立ち、彼に当たるのは間違っていると思いながらついキッと睨んだ。
 悔しくて、この行き場のない苛立ちを吐き出すように口を開く。

 今思い返せば何故あんなことを言ったのか。
 きっと色々重なり、もうやけくそになっていたとしか思えないのだが――その時、私の口から出たのは余りにも突飛な言葉だった。

「だったら、貴方を買うわ」
「へ?」
< 8 / 97 >

この作品をシェア

pagetop