小林、藝大行くってよ
 それに、もう終わった恋なんや。嫌いになって別れたわけやないが、おれのなかでは区切りがついとる。

 あんときは、めっちゃ悩んでめっちゃ話し合った。別れずに、会うのを我慢しながら勉強に励む道も模索した。ただ、いくらおれが天才でも、雑念だらけの状態やとなにもかも上手くいかんかった。

 お互いの存在が足枷になっとる。その悲しい現実を前に高校生のおれらは打ちのめされ、結果的に別れることになったんや……。

 おっと。少々センチメンタルな話になってしもたな。とにかく、別れたからには自分の道をしっかり進まなあかんねん。そやから、またヨリを戻すとか、そんなことはありえへん!

「お、もう返事が来たな。なになに、久しぶりに会いませんか……って、会いますぅ~!」

 海荷ちゃんからのお誘いッ! 行くしかないやろッ!

 いや、これは下心ちゃうで。オトモダチやから会いたいやん? 近況を語り合いたいやん?
 そう、ただそれだけのことや。決して甘いロマンスを期待しとるわけやないッ!

 っちゅーわけで、さっそく明日の昼、海荷ちゃんと茶をしばくことになった。ルンルンッ!

 よし、部屋で着ていく洋服を選ぶで。もうエアコンつけてええやろ。
 熱風を呼び込んでいた窓を閉め、エアコンをONにする。最初は最大風量にするで。
 ああ、快適ッ! エアコンありがとうッ!

「さーて、どれにするかなー」

 タンスから何枚かTシャツを出して、じっくり眺める。

 芸術を極めんとする天才は、ファッションにもポリシーを持たなあかん。

 ヒデはまったく垢抜けとらんが、とりあえず清潔感は意識しとるらしい。ヨネは自分に似合うサブカル系ファッション。浅尾っちは、色という色をふんだんに使ったド派手でアバンギャルドなファッション。それぞれ個性があるで。

 そしておれのこだわりは、Tシャツや!
 関西人たるもの、常に「笑い」を意識せなあかん。そやからおれはTシャツに一発ギャグを仕込んで、出会った人をほっこり笑顔にさせとるんや。

 東京にもTシャツはぎょーさん持っていっとるが、それでもまだ実家に結構残っとる。ネットで買うだけやのうて、自分で描いたりもしているんやで。

「どれやったら、海荷ちゃんがほっこりしてくれるやろか……」

 あのチャーミングな顔を思い浮かべる。海荷ちゃんは、いつもおれのTシャツを見てニコニコ笑ってくれとったなぁ。

 ユーモアがあって優しくて裏表がなくてかわいくて……誰からも好かれる、おれの自慢の彼女やったわ。

 繰り返すが、決してヨリを戻したいわけやないぞッ! 海荷ちゃんへの愛は変わらんが、お互い自分の道を歩んどるからな!
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