気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「初めて会った時、プレザントリゾートの案内をしただろう。なにを紹介しても驚いてくれるのが、見ていて新鮮だった。お客様のそういう反応を見たくて開発に手を貸したのにな」

「……うん」

「なんだか目を離せなくなった。今まで会ったことのないタイプの人だなと。特に自然と距離を縮めてくるところとか。だから触れられても嫌じゃないと――触れたいと思ったんだろう」

 触れられても嫌ではない、というのと、触れたい、というのは大きな差がある。

 どきりとするのと同時に、彼が突然抱きしめてきた時のことを思い出した。

「不安にさせてすまない。だが、自分から触れたいと思ったのも、なにかを贈りたいと思ったのも、もっと知りたいと思うのも、君だけなんだ」

 言葉を選んで、丁寧に私の不安を取り除こうとしてくれているのがわかる。

 彼の優しさは泣きたいほどうれしかった。

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