気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「私が知ってるのは、甘いものはそんなに食べないみたいだけど、甘辛い味は好きってこととか……そういうのだから」

「思ったより、俺についてなにも知らないということがわかった」

「ご、ごめん」

「いや。ある意味では誰よりも詳しいか。俺の味の好みを知っている人間は少ないからな」

「お母さんは?」

 自分に当てはめて質問してから、はっと口をつぐむ。

 私が実の両親を亡くしているように、彼もそうだったら――。

 つくられた笑みは彼の感情を覆い隠していた。

 なにげなく聞いたつもりが、失言だったようだ。

「ごめん、今のは……」

「俺たちはお互いについて、きっと知らないことばかりなんだろう。わかっていたのに、わかっていなかった。だから悩ませてしまったんだな」

 また、志信さんが私の髪を撫でた。

 指ですくいとったひと房をつまんで、くるりと巻く。

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