気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 彼が衝動のままどう私を求めたのか、思い出させるような手つきだ。

「昨日は素晴らしい夜だった。君を抱いて眠ると、こんなに幸せな気持ちで朝を迎えられるんだな」

「抱いっ……!?」

「そのままの意味だが?」

 志信さんはベッドに肘をつくと、くすくす笑った。

「俺のこと、意識してるんだな」

「……うん」

「かわいい」

 そのひと言だけで、あっという間に昨日与えられた熱を呼び起こされる。

 志信さんは私を抱き寄せると、耳や頬や、思わず閉じたまぶたにキスをした。

「昨日の匂い……しなくなっちゃった」

 距離がぐっと近づいた際、なにも香らなかったことに気づいて呟く。

「匂い?」

「柑橘系の、ちょっとスパイスみたいな匂い。香水?」

「ああ、あれ。特別な日にしかつけないんだ。願掛けみたいなものだな」

「特別な日……」

< 218 / 276 >

この作品をシェア

pagetop