初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
そして、月日が流れ琴葉が俺と同じ会社に入社してきた。
芹から琴葉の就職先の話を聞いていなかったので本当に驚いた。
琴葉と最後に会ったのは、俺が二十歳前後だったと記憶している。
芹から定期的に琴葉の写真を見せられていたけど、それは彼女が高校生の時まで。
初対面で頬にクリームをつけていた可愛い女の子は、十数年経ち綺麗な大人の女性へと成長していた。
会社で初めて視線を合わせた時、琴葉は俺のことを覚えていないのか、彼女の瞳から全く好意を向けられることはなかった。
それどころか彼女に彼氏がいることを知り、ショックを受けている自分がいた。
俺はいったい何を期待していたんだろう。
今まで曖昧に濁して逃げていたし、こうなることを願っていたはずだ。
俺は兄の友人ではなく、ただの上司として琴葉と接しようと心に決めた。
琴葉は部下として本当に優秀だった。
分からないことがあれば、筆記用具持参で質問に来る。
ミスをすれば謝罪して反省し、すぐに修正して同じミスをしないように対策をする。
当たり前だけど、これが出来ない人間もいる。
彼女の仕事に対する姿勢は本当に目を見張るものがあった。
何でもすぐに吸収する琴葉に資料作りを一からたたき込んだので、彼女の作る書類はほとんど欠点のない出来だった。
琴葉の一生懸命仕事に取り組む姿や先回りしてフォローしてくれる勘の良さ、ふとした時に見せる笑顔に気が付くと惹かれていた。
だけど、琴葉には彼氏がいる。
彼女への恋心を隠し、上司として接することを選んだ俺に転機がやってきた。