初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋

『琴葉と別れるつもりはないから俺の周りをうろついても無駄だ。あと、琴葉にも迷惑をかけることはするなよ。これ以上、俺の視界に入らないでくれ』

俺の言葉に三条の娘は無言で席を立ってその場を後にした。

『はぁ、何だったんだ。マジで神出鬼没で呪われているのかと思った』
『厄介な女に絡まれていたんだな。お祓いに行ってきた方がいいんじゃないのか』

洋輔が憐みの目を向けてくる。

『それも考えた。二度と絡まれたくないからな』

そう言って席を立ち、バーテンダーに謝罪すれば『お気になさらず。またお越しください』と言ってくれた。
バーテンダーは顔見知りとはいえ、場違い女のせいで申し訳ない気持ちになっていたので、彼の言葉で少し安堵した。

『次は落ち着いたメンバーで来るよ』と言って支払いを済ませた。
三条の娘のせいで洋輔にも不快な気持ちにさせてしまったので、今日は俺が奢ることにした。

『俺、三条の娘を初めて見たけどなかなか強烈だったな』
『強烈にもほどがあるだろ』
『御曹司に声をかけているって聞いてたけど、玉砕しても次から次へと声をかけててプライドとかないのか?』

洋輔は呆れたように言う。

『さあ。とりあえず、あれだけ言ったから大丈夫だろう』
『琴葉ちゃんもいいとばっちりだな。これ以上何もないことを祈っとくよ』

俺の肩をポンと叩く洋輔に『ホントにな』と言ってエレベーターのボタンを押した。
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