遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
「俺は真冬の友達に、最初から事情を話した上で付き合っている振りを頼んでいたけれど、いつの間にか惚れられて、約束を反故にされる。その繰り返しだったんだよ。どうせ俺が告白をしても、真冬は逃げる。そう思っていたから、振られるのが怖くて、でも男どもの中で、だれよりも真冬の一番近くにいたかった」

 玲央の言葉に、私は胸が痛んだ。

「瑠璃は面白がって、見ているだけで何もしないし。でも大学に進学してからも、一番親身になって相談に乗ってくれていたんだ」

「じゃあ、瑠璃とは……」

 高校時代、二人は本当に仲睦まじいように見えたけれど、恋人同士ではなかっただなんて……

「真冬の前では仲良さそうにイチャイチャしているように見せていたけれど、真冬の目が届かない場所ではボロカスだったよ、俺」

 そう言って、玲央はスマホを取り出すと、瑠璃とのやり取り画面を見せてくれた。そこには玲央の書いていることに、逐一ダメ出しをする瑠璃の言葉の羅列やスタンプが表示されていた。直近だけではなく、少し遡ってみても、終始がそんな調子だ。

「それに、お見合いの話があるって……」

 瑠璃とのやり取りを見せてもらって、当時も今も、恋愛感情での付き合いではないことがはっきりしたけれど……
 職場でまことしやかに囁かれている噂だ。真相をきちんとさせておかないと、後でまた泣くことになる。
 私の疑問に、玲央はキッパリと返答した。

「ああ、あれはデマだよ。うちの両親、自分の伴侶になる人間くらい自分で見つけろって考えだから、取引先から話を持ちかけられたとしても、全部断ってくれているよ」

 玲央の言葉に、玲央の父である社長の顔が思い浮かんだ。たしかに社長は、そのようなコネクションを使って取引先を拡充したりするような人ではない。

「これで、信じてくれるか? 俺の気持ち」

 玲央と出会って十年が経つ。お互いずっと好きだったのだ、遠回りの恋だったけれど、玲央の気持ちを信じるしかない。

「玲央、十年も私の気持ちを弄ぶだなんて、随分と悪い男だよね」

 私の声に、玲央は抱擁で答えてくれる。

「人のこと言えるかよ。真冬だって、俺の気持ちを弄んで悪い女だぞ。でもそんな悪い男に捕まったんだ、もう逃げられると思うなよ? 十年分の愛情を、たっぷりと思い知らせてやるからな」

 玲央の言葉に、私は彼の胸の中で頷いた。

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