大嫌い同士の大恋愛
「それで、結局、何があったのー?」

 私が作った夕飯を食べ終え、聖が、食器を洗いながら振り返った。
 いつも、作るのは私で、洗うのは、彼女の役目だ。

「別に……何って訳じゃないわ」
「でも、羽津紀が男を部屋に上げるなんて、何かあったとしか思えないんだけどー」
 フライパンをすすぎ、水を止め、聖は手を拭いて貸していたエプロンを、定位置にあったハンガーにかけた。
「何かあったっていうか――アイツのファンみたいな女性達が、部屋に押しかけて来ようとしたから、逃げてきたのよ」
 そう、あきれながら言い、私はコーヒーを口にした。
 聖は、私の目の前に座り、自分の分のカフェラテを淹れたカップに口を付けながら、目を丸くする。
「えぇー?それ、ウチの会社のヒト?」
「みたい。――もしかしたら、人事のデータ盗み見たのかも」
「うわぁー、ヤバ!神経疑うわー」
 聖は、思い切り、形の良い眉を寄せて、しかめ面を作った。
 男好きを自認してはいるが、聖の行動は、いつも正々堂々ストレートだ。
 見た目に反して――というのもどうかと思うけれど、彼女は、意外と男前。

 ――自分に自信があるから――真っ直ぐでいられるんだろう。

 そんな聖といると、自分も、後ろ指を差されない人間でいようと思えるのだ。

「で、羽津紀は、三ノ宮くんとどういう関係なのー?」
「え」
「何か、因縁?みたいな感じ?二人だけで通じてるカンジで、妬けるんだけどー?」
「……別に……」
 口ごもり、ごまかすように、コーヒーを飲み干す。
 その間も聖は、私から目を逸らさない。
 私は、その視線から逃れるように、カップを持って立ち上がった。
「羽津紀―?」
「……ごめん。……言いたくない――」
「そっか。じゃあ、いいや」
 聖は、そう言って、あっさりと引き下がると、カフェラテを美味しそうに飲んだ。
「――ごめん」
 私は、食器を洗い終えたシンクにカップを置く。
「別に良いよー。無理矢理聞くつもり無いし。ただの興味本位だから」
「……まあ……言えそうなら、言うから」
「ん、じゃあ、それで」
 聖も飲み終えると、私の分と一緒に、サッとカップを洗い終える。
「あ、でもさ、デートの服に困ったら、アタシの貸してあげるねー!」
 そう、呑気笑う聖に、私は眉を寄せた。
「……予定なんて無いし、そもそも、アンタは体型が違うじゃないの」
「アハハ―!それもそっか。じゃあ、選んであげるねー」
「前提として、アイツとは、デートするような間柄じゃないわよ」
 私は、そう言って、聖の頭を軽く小突いたのだった。
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