いつまでも
第七章
side優愛
次の日
今日はグランプリシリーズのフランス大会の男子ショートの日
つまり、蒼のショートの日
時差の関係でリアルタイムで見れないけど日本のゴールデンタイムに録画放送するらしいからそれはスマホで見るつもり
蒼も初のシニア国際大会だし
「優愛~
今日は学校行く?」
「うん!行くよ?」
なんで今日聞くんだろ?
昨日行ったから行くものじゃないの?
「そう
ほらね、行っちゃえばどうってこと無かったでしょ?
しかもSクラス、あんたが思ってるようなアンチなんていないわよ」
うぅぅ
やっぱ優菜にはかなわないよね
頭の中全部見られてる気分
「朝練は…もう間に合わないからちょっとだけトレーニングする?」
えっ?!
もうそんな時間なん?
珍しく優菜が寝坊?
「寝坊なんてしてないわよ?
勉強だってしなきゃいけないから、今日はそうやって決めてただけ」
もおーう!
なんで分かるん?
私ってそんな分かりやすい?
てか、やっぱり優菜はさすがだね
ちゃんと先を見据えてる
私も勉強しなきゃだなー
爽太に勝つのは今までになく難しいはず
仕事がない分、私も頑張ろ!
「で、どうする?
トレーニング行く?」
あ〜、そうだった、そうだった
「行く
ちょっと待ってて
運動着に着替えてくる」
一旦自室に戻ってトレーニングウェアに着替えて玄関におりた
「よし、行くよ」
「は〜い」
そう返事をして外に出た
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕方
スマホを机の上に置いてテキストを広げる
うーんっとまず、何点取ればいいんだ?
爽太っていつも圧倒的な点数で1位だよね?
まず、多分数学、英語は勝てるかは別として取れる
問題は国語
とにかく苦手だからどうにかする必要はあると思う
3科目で勝てばいいなら捨てるという手もあるくらい
英語と数学はきっとマスト
問題は理社だ
多分…怪しい
理社はやった分だけ上がるからファイナルが控えているとはいえ、私より勉強量の多い爽太が強いのは明らかだ
私は効率よくやってかなきゃいけないってこと
よしっ
まずは社会
問題ときまくるしかないよねー
あーあ、そんなことしてるうちに時間になっちゃったよ
シニア1年目の蒼は前半にすべる
昨日聞いたら6番滑走って言ってたから第1グループの最終滑走だ
ってことはそろそろだよね
1度椅子から立ち上がって隣にある優菜の部屋をノックする
「優菜~
一緒にショート見ない?」
「は〜い、ちょっと待って
もう少ししたらリビング行く」
あっ、テレビで見るつもりなのね
じゃあ私もそうしよ
そう思ってリビングに降りた
こんなに大家族なのに家にほとんど人がいないってよく考えると変よね……
もちろんみんな忙しいのは分かってるけど
そんなことを考えながらテレビをつけると蒼の2人前の人がすべっていた
テレビって言ってもプロジェクターだけど
せっかくだし紅茶でもいれとくか
優菜の好きなアップルティーにしよ
「お待たせ
おっ、次じゃん
最近どうだったっけ?蒼」
うーん、どうだろ?
自分のことで精一杯だったからあんま見れてないな……
「ってか、蒼になんか言われた?」
なんかって?
アップルティーを渡しながら首をかしげる
ストローで氷をかき混ぜながら1口飲んだ
うん、甘すぎじゃなくておいしい
「何もないならいいわ」
そう言ってため息をついた優菜
最近なんか隠してるよね?蒼のこと
よく聞いてきたり、話したりする割にはなんも教えてくれないし
もしかして……
「好きなの?蒼のこと」
そう言うと優菜は吹き出しそうになった
えっ!?
まさか図星?
いやいや優菜がそんな分かりやすいわけないよね
「はぁーー
なんかズレてるわ」
え?
ズレてるってどっかは合ってるん?
「あっ、始まるよ~」
もぉー
逃げたな!
始まったのは事実なので私もテレビに集中する
音楽が流れはじめて蒼がすべりだした
まずはクワドサルコウ+トリプルトウループ
男子はショートからクワドがとべるからショートから4回転祭りだ
音楽に合わせて思いっきりとびあがった
すごい!
危なげなくセカンドジャンプも着氷してすーーっと流れていく
蒼の曲は「ラヴェンダーの咲く庭で」
今まで元気で明るい曲が多かった分落ち着いた曲は新鮮だ
次のジャンプはトリプルアクセル
ってことは単独ジャンプは最後だ
そういえば…蒼って背のびたよね
もともと小柄だったのがスラッとしてかっこよくなった
そんな蒼は全部のジャンプをしっかりと決め、ステップもミス1つなくすべり切った
出た得点はもちろん1位
2位に圧倒的な差がついていた
「最終グループには残れそうだけど順位はどうなるだろうね」
え?
こんな差が着いてるから1位も夢じゃないでしょ
「男子ってジャンプが進化しまくってるからコンボがクワドルッツ+トリプルトウループだったり、クワドフリップ+トリプルトウループが多いんだよ
で、とばなかった方のルッツ、フリップを単独でとぶ
そうすると基礎点が周りより低い蒼はキツいかもね」
そっか
よく考えたらこのフランス大会、昨年の世界王者、エフレム・コルサコフ(スイス)さんや昨年は怪我であまり出場してなかったけど前回のオリンピック金メダリストのロバート・ジョセフ(アメリカ)さんが出てる
他にも男子は蒼みたいに今シーズンシニアに上がった有力選手やベテランの力強い選手が多い
それを考慮すると厳しいのかもしれない
「まあ、大丈夫よ
そんだけ難しいジャンプを組み込むってことはミスの可能性も高くなる
後は蒼の演技力があれば戦えるわ
さっ、動き出しましょ
地下のリンク行こう」
「うん、私も行くわ」
カップをシンクに置いてリンクへ向かった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日
「ねえ、優菜
どうやってオーディション発表されるの?」
朝練が終わって学校に向かう途中
「確か、エントランスホールに張りだされるんじゃなかった?」
えっ?
それ、何気にキツイかも
そんなことを考えていたら、着いてしまった
ゲートにカードをタッチしてくぐり、エントランスホールに入ると普段は静かなSクラスのエントランスホールが人でごった返していた
うわっ
すごい人
「ヤバいね~、これ
このクラスは出る人も多いから確認が多いはずだけど」
「そっか、別に役を確認してるだけの子もいるはずだよね
特にSクラスなんてオーディション発表なんて日常茶飯事だし」
「一旦教室入って、カバンとか置いたらまたこよっか」
「うん」
1度カバンを置いて戻ってくると、紗絵ちゃんと陽茉莉ちゃんを見つけた
「優愛~!
おはよ」
「おはよう!」
「みてみて!優愛、やっぱ主役だよ!」
紗絵ちゃんに言われてはじめて見ると、1番上の主役の欄に、橘優愛と書かれていた
うそっ
ほんとに?
「ほんとだ……
大丈夫かな?また麗華たちに何か言われそう」
そう言うと背中に衝撃が走った
痛っ!
振り向くと優菜が手を振り切った後の形を残してこっちを見ていた
「何言ってるの?当たり前じゃん
でも、大丈夫よ、うちらが守るから」
「かっこいい!優菜!」
陽茉莉ちゃんが茶化す
言われるのは当たり前、か……
しょうがないことかもしれないけど申し訳ないや
「とにかく!
優愛はやり切って、周りとの差を見せつける!
それしかないでしょ?」
「はい…
頑張ります」
二つ返事で答えてしまったのだった
「そういえば、昨日の蒼すごかったね~」
陽茉莉ちゃんが思い出したように言った
「そうそう!シニア1年目にしてショート2位なんて」
そう!
基礎点の差で抜かされるのかと思った蒼だったけどエフレムさん以外、いくら基礎点が高くてもノーミスの蒼にはかなわなかった
今日は女子ショートと男子フリー
女子ショートがうちらの昼休みと被ってそうだからリアルタイムで見る予定
男子フリーはまたもや合わなさそうだからテレビで見ようと思う
「優愛も頑張ってね、フィンランド大会
2位だったってことはまだまだ可能性あるんでしょ?」
「うん!1位取れば確実、2位だと多分行ける、くらいじゃないかな〜
あっ、優菜だって1位ならゼロじゃないんだから応援してあげてね」
そう言うと
「もちろんよ!
でも、先に行くのは優愛でしょ?」
まあね
フィンランド大会には優菜はいないけど、蒼がいる
清華もいてめっちゃ心強いメンバーだけど迷惑はかけないようにしなきゃね
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
ヤバっ
まだ廊下にいるのにチャイムなっちゃった
普段なら遅刻扱いだけどほとんどの人がここにいるしどうだろ?
そんな感じで慌てて教室に戻るのだった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まもなく、着陸致しますのでシートベルトをおつけください」
そんなアナウンスは長い飛行機の旅の終了のお知らせだ
いよいよ明日からフィンランド大会
1日目は男子ショートだけで女子は明後日からだけど
この大会には現世界女王のエミリー・ウィリアムさんが出てる
そして、グランプリシリーズ第1戦で優勝した先輩の鈴木彩乃ちゃんがいる
多分、カナダ大会よりも厳しくなりそうだ
男子もベテラン選手が多かったり、日本王者の浅野弘也さんがいるから簡単には勝てないだろう
でも、シニア1年目にして3位に食いこんだ蒼なら……なんて期待もある
まあ、強い人のことを考えてたって何も変わらないから全力で勝負するだけ
「優愛、行くよ」
「はーい!」
隣に座っていた清華にそう言われてもう着陸していた飛行機から降りた
ホテルに着いて、今回は私と清華、彩乃ちゃんの3人部屋
「はあ〜!疲れた!」
そう言ってキャリーケースを引っ張ってきて座った彩乃ちゃん
しっかり者のお姉ちゃん的存在だけどほわほわしてて優しい人
「お疲れ様です
明日の公式練習のためにちゃんと休みましょう」
そう言ったのは清華
清華も1つ年上ではあるんだけど、スケート年齢が一緒だったし、私の方がクラブに入ったのが先だったこともあってタメ口なんだよね
「そうね~
今日は明日に向けて早く寝た方がいいかもね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日
朝は男子の公式練習で昼頃から私たち女子の公式練習が始まる
夜は男子ショートだからサブリンクでの公式練習が終わったあと、ホテルに戻る時間はあるよね?
時差ボケで昨日の夜はなかなか寝付けなかったけど飛行機の中で変に寝たからだろう
もともと、しっかりしてるとは言えないような生活リズムだけど
そうそう!
朝行った開会式(男子は昨日あった)で私は第3グループの4番滑走になった
清華は第1グループの6番滑走だからアップの途中でちょっとだけ見ることはできそう
彩乃ちゃんは第6グループの5番滑走だから絶対に間に合うし
ちなみに、最後はエミリーさんというボス的な2人が最後を飾ることになった
「優愛、そろそろ行ってアップしよ?」
あっ、そっか
清華は第1グループだから早いのか
私も軽く動き始めよっかな
「うん、今行く」
そう返事をしてホテルの部屋から出た
運がよく、サブリンクの近くにアップできそうな芝生があったのでその辺で軽くランニングをしていると
「あなた達日本の選手よね?」
英語で話しかけられた
え?
立ち止まって振り返るとそこにはエミリーさんがいた
「はい、橘優愛です
どうしましたか?」
「Oh~!
ユアね!この前2位だった子!
アヤノ知ってる?」
あーね!
彩乃ちゃん探してたんだ
世界女王がその辺にいる日本人に声かけるなんておかしいと思ったよ
「多分、まだホテルにいますよ?
電話かけましょうか?」
そう言うと、
「大丈夫!
これからよろしくね
同じ大会になることも多くなると思うし」
そう言って去って行ってしまった
「ちょっと優愛
エミリーさんと何話してたの?」
あっ清華
「彩乃ちゃんはって聞かれたから多分ホテルですって言っただけ」
清華は羨ましそうに
「いいなー英語できるって
他の国の子とも話し放題だもんね」
そうつぶやいた
そういえばそうだよね
周りのメンバー、優菜や夏鈴、蒼、爽汰、誠は普通に話せちゃうからあんま特別な感じしないんだよ
「まあ、大丈夫じゃない?
ここに遊びに来てるわけじゃないんだからそんなに現地の人とも周りとも話さないでしょ」
「それもそうね
私、そろそろ行くね
バックステージでストレッチとかするわ」
「行ってらっしゃい!」
私はそう言って清華の背中を見送った
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕方
いよいよ男子ショートプログラムが始まる
蒼は第2グループの2番滑走
公式練習の後少し話したら絶好調だから絶対優勝するって意気込んでいた
ジュニアの時はあんなに周りを圧倒してたのにシニアはやっぱすごいと思う
「あっ6分間練習はじまるよ」
ほんとだ
第1グループの最後の選手が退場して第2グループの選手達が一斉にリンクにとびだした
蒼はやっぱり絶好調みたいでクワドトウループも成功させている
あの出来ならGOEもたくさんプラスされるだろう
第2グループで初出場が多いにも関わらずどの選手も4回転ジャンプはバンバン成功していた
いよいよ蒼の番
音楽に合わせてすべり出した蒼は思いっきりとびあがった
クワドサルコウ+トリプルトウループ
わあ!
なんて完璧なの!
非の打ち所がないジャンプを決めてみせた
ステップもゆるやかな曲調に合わせてなめらかに進んでいく
スピンもポジションにちゃんとはまっていて最後までノーミスの完璧な演技だった
スピンなんていつもよりも速かったんじゃない?
蒼が最後のポーズをきめたときほとんど全員がスタオベだった
「すごかったね~」
「ファイナルも夢じゃないよ!」
私と清華が話していると
「それはどうかしらね」
「「え?」」
彩乃ちゃんの声がして私と清華は一緒に声をあげた
「このフィンランド大会男子も女子もすごいレベルが高いのよ
あなた達のようにジュニアから上がってきた実力者が多いのと日本選手が強すぎよね
弘也くんに洸輝くんでしょ?
2人ともすごいわよ」
洸輝くんというのは大阪の選手で坂本洸輝さん
私たちの2つ年上で一昨年の世界ジュニア王者
昨年はファイナルに出場したけれど少し前に負ってしまった怪我が悪化してシーズン後半は出ることができなかったらしい
私も一昨年の世界ジュニアで一緒に出たから分かるけど男子には珍しいスピンが上手い人だ
他にも私は分からないけど外国のすごい人もいるだろう
洸輝さんは後半の第3グループだから少し空いてしまうけど観戦はするつもり
蒼は同じクラブだから見慣れたプログラムだけど全く知らないプログラム見るのも新鮮で楽しいよね
見慣れたプログラムは細かい仕草までが音楽の表現で見入ることができて感動するんだ
次の選手はベラルーシの選手
シニア1年目の人だ
最初のトリプルアクセルでステップアウトしてしまったけど表現力がすごくてPCSが高かった
そして、しばらくすると第3グループが始まり、洸輝さんの番になった
洸輝さんの曲は『火の鳥』
まずはクワドサルコウ+トリプルトウループ
すごい!
半年のブランクがあるはずなのに完璧なジャンプ
次のほとんど助走なしでとんだトリプルアクセルは着氷後少し詰まってしまったけど
ちゃんと加点がもらえるジャンプだ
最後は男子では珍しいビールマンスピンで締めた
「すごすぎる!
蒼とどっちが高いんだろ?」
彩乃ちゃんがつぶやいた
うーん、どっちもノーミスだしな~
「あっ、出た」
出た得点は……
2位と0.06点差で1位!
うっわー!
蒼、相当悔しいだろうな
「今回シーズン、レベル高いね」
うん
男子も女子も大接戦だ
「さっ、帰りましょ
私たちも明日はいよいよ本番だからね」
彩乃ちゃんが先陣切って関係者席を立って出てってしまったので私と清華も追いかけた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日
もうすぐ女子ショートプログラムの私の番が始まる
現在トップは清華
相当高い点数だからノーミスじゃないと勝てないと思う
1つ前の子の演技が終わって私はリンクに入る
「優愛~
ちょっときて」
寺田先生に言われてすべっていくと
「緊張してる?」
そういえば……
あんましてないかも
首を横に振ると
「やっぱりね
なーんか上の空っていうか
はい、集中!」
いつもより力強く背中を押されて最初の位置に送り出された
ふぅー
大きく息を吐き出してポーズをとる
音楽がなりはじめてまずは最初のジャンプ
トリプルアクセルのはずだったのになぜかトリプルルッツをとんでしまった
あっ
そっか
コンボにすればいいんだ
トリプルループをセカンドジャンプにつけてすーっと
流れるようなジャンプがとべた
その後のスピンもステップも白鳥が湖に残した波紋をイメージして綺麗に氷に後をつけていく
最後のジャンプ、トリプルアクセルも綺麗に決まって、最後はビールマンスピンでしめた
うっわーー
観客のほとんどがスタオベしてくれてるよ
丁寧にレヴェランスをしてリンクサイドに戻る
「よかったわ、優愛」
「ありがとうございます」
「でも、なーんであんなにぼーっとしてる感じがしたのかは謎だわ」
うーん
確かにずっと集中できない感じはしてた
でも、音楽が流れはじめたら勝手に体が動いてくれた
「まあ、最初にトリプルルッツとんだのは焦ったけど
リカバリーできててよかったわ」
キスクラに座って得点を待つ
少しすると得点が出た
わっー!
パーソナルベスト更新!
そっか、
トリプルアクセルを最後に持ってきたから普段のトリプルフリップよりも基礎点は高いし、点数も1.1倍になったんだ
もちろん順位も1位
まだ、後半グループが残ってるたけどひとまず安心
「はい!ミックスゾーンで取材受けてきてね
優愛、いつも行くの遅いって知り合いによく言われるから
芸能人なんだからそれくらい考えなさいよ」
はーい……
「ショートパーソナルベスト更新おめでとうございます!
手応えはどうでしたか?」
ミックスゾーンに入ると早速質問された
「ありがとうございます
最初、本当はトリプルアクセルの予定だったんですけどトリプルルッツをとんでしまって、その時は焦りました
きちんとリカバリーできてよかったです」
「最後にフリーに向けて何か一言お願いします」
それからいくつかの質問を受けていよいよ最後の質問
「確実にファイナルに行くためには優勝が必要なので、優勝目指して頑張ります!」
今日はグランプリシリーズのフランス大会の男子ショートの日
つまり、蒼のショートの日
時差の関係でリアルタイムで見れないけど日本のゴールデンタイムに録画放送するらしいからそれはスマホで見るつもり
蒼も初のシニア国際大会だし
「優愛~
今日は学校行く?」
「うん!行くよ?」
なんで今日聞くんだろ?
昨日行ったから行くものじゃないの?
「そう
ほらね、行っちゃえばどうってこと無かったでしょ?
しかもSクラス、あんたが思ってるようなアンチなんていないわよ」
うぅぅ
やっぱ優菜にはかなわないよね
頭の中全部見られてる気分
「朝練は…もう間に合わないからちょっとだけトレーニングする?」
えっ?!
もうそんな時間なん?
珍しく優菜が寝坊?
「寝坊なんてしてないわよ?
勉強だってしなきゃいけないから、今日はそうやって決めてただけ」
もおーう!
なんで分かるん?
私ってそんな分かりやすい?
てか、やっぱり優菜はさすがだね
ちゃんと先を見据えてる
私も勉強しなきゃだなー
爽太に勝つのは今までになく難しいはず
仕事がない分、私も頑張ろ!
「で、どうする?
トレーニング行く?」
あ〜、そうだった、そうだった
「行く
ちょっと待ってて
運動着に着替えてくる」
一旦自室に戻ってトレーニングウェアに着替えて玄関におりた
「よし、行くよ」
「は〜い」
そう返事をして外に出た
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕方
スマホを机の上に置いてテキストを広げる
うーんっとまず、何点取ればいいんだ?
爽太っていつも圧倒的な点数で1位だよね?
まず、多分数学、英語は勝てるかは別として取れる
問題は国語
とにかく苦手だからどうにかする必要はあると思う
3科目で勝てばいいなら捨てるという手もあるくらい
英語と数学はきっとマスト
問題は理社だ
多分…怪しい
理社はやった分だけ上がるからファイナルが控えているとはいえ、私より勉強量の多い爽太が強いのは明らかだ
私は効率よくやってかなきゃいけないってこと
よしっ
まずは社会
問題ときまくるしかないよねー
あーあ、そんなことしてるうちに時間になっちゃったよ
シニア1年目の蒼は前半にすべる
昨日聞いたら6番滑走って言ってたから第1グループの最終滑走だ
ってことはそろそろだよね
1度椅子から立ち上がって隣にある優菜の部屋をノックする
「優菜~
一緒にショート見ない?」
「は〜い、ちょっと待って
もう少ししたらリビング行く」
あっ、テレビで見るつもりなのね
じゃあ私もそうしよ
そう思ってリビングに降りた
こんなに大家族なのに家にほとんど人がいないってよく考えると変よね……
もちろんみんな忙しいのは分かってるけど
そんなことを考えながらテレビをつけると蒼の2人前の人がすべっていた
テレビって言ってもプロジェクターだけど
せっかくだし紅茶でもいれとくか
優菜の好きなアップルティーにしよ
「お待たせ
おっ、次じゃん
最近どうだったっけ?蒼」
うーん、どうだろ?
自分のことで精一杯だったからあんま見れてないな……
「ってか、蒼になんか言われた?」
なんかって?
アップルティーを渡しながら首をかしげる
ストローで氷をかき混ぜながら1口飲んだ
うん、甘すぎじゃなくておいしい
「何もないならいいわ」
そう言ってため息をついた優菜
最近なんか隠してるよね?蒼のこと
よく聞いてきたり、話したりする割にはなんも教えてくれないし
もしかして……
「好きなの?蒼のこと」
そう言うと優菜は吹き出しそうになった
えっ!?
まさか図星?
いやいや優菜がそんな分かりやすいわけないよね
「はぁーー
なんかズレてるわ」
え?
ズレてるってどっかは合ってるん?
「あっ、始まるよ~」
もぉー
逃げたな!
始まったのは事実なので私もテレビに集中する
音楽が流れはじめて蒼がすべりだした
まずはクワドサルコウ+トリプルトウループ
男子はショートからクワドがとべるからショートから4回転祭りだ
音楽に合わせて思いっきりとびあがった
すごい!
危なげなくセカンドジャンプも着氷してすーーっと流れていく
蒼の曲は「ラヴェンダーの咲く庭で」
今まで元気で明るい曲が多かった分落ち着いた曲は新鮮だ
次のジャンプはトリプルアクセル
ってことは単独ジャンプは最後だ
そういえば…蒼って背のびたよね
もともと小柄だったのがスラッとしてかっこよくなった
そんな蒼は全部のジャンプをしっかりと決め、ステップもミス1つなくすべり切った
出た得点はもちろん1位
2位に圧倒的な差がついていた
「最終グループには残れそうだけど順位はどうなるだろうね」
え?
こんな差が着いてるから1位も夢じゃないでしょ
「男子ってジャンプが進化しまくってるからコンボがクワドルッツ+トリプルトウループだったり、クワドフリップ+トリプルトウループが多いんだよ
で、とばなかった方のルッツ、フリップを単独でとぶ
そうすると基礎点が周りより低い蒼はキツいかもね」
そっか
よく考えたらこのフランス大会、昨年の世界王者、エフレム・コルサコフ(スイス)さんや昨年は怪我であまり出場してなかったけど前回のオリンピック金メダリストのロバート・ジョセフ(アメリカ)さんが出てる
他にも男子は蒼みたいに今シーズンシニアに上がった有力選手やベテランの力強い選手が多い
それを考慮すると厳しいのかもしれない
「まあ、大丈夫よ
そんだけ難しいジャンプを組み込むってことはミスの可能性も高くなる
後は蒼の演技力があれば戦えるわ
さっ、動き出しましょ
地下のリンク行こう」
「うん、私も行くわ」
カップをシンクに置いてリンクへ向かった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日
「ねえ、優菜
どうやってオーディション発表されるの?」
朝練が終わって学校に向かう途中
「確か、エントランスホールに張りだされるんじゃなかった?」
えっ?
それ、何気にキツイかも
そんなことを考えていたら、着いてしまった
ゲートにカードをタッチしてくぐり、エントランスホールに入ると普段は静かなSクラスのエントランスホールが人でごった返していた
うわっ
すごい人
「ヤバいね~、これ
このクラスは出る人も多いから確認が多いはずだけど」
「そっか、別に役を確認してるだけの子もいるはずだよね
特にSクラスなんてオーディション発表なんて日常茶飯事だし」
「一旦教室入って、カバンとか置いたらまたこよっか」
「うん」
1度カバンを置いて戻ってくると、紗絵ちゃんと陽茉莉ちゃんを見つけた
「優愛~!
おはよ」
「おはよう!」
「みてみて!優愛、やっぱ主役だよ!」
紗絵ちゃんに言われてはじめて見ると、1番上の主役の欄に、橘優愛と書かれていた
うそっ
ほんとに?
「ほんとだ……
大丈夫かな?また麗華たちに何か言われそう」
そう言うと背中に衝撃が走った
痛っ!
振り向くと優菜が手を振り切った後の形を残してこっちを見ていた
「何言ってるの?当たり前じゃん
でも、大丈夫よ、うちらが守るから」
「かっこいい!優菜!」
陽茉莉ちゃんが茶化す
言われるのは当たり前、か……
しょうがないことかもしれないけど申し訳ないや
「とにかく!
優愛はやり切って、周りとの差を見せつける!
それしかないでしょ?」
「はい…
頑張ります」
二つ返事で答えてしまったのだった
「そういえば、昨日の蒼すごかったね~」
陽茉莉ちゃんが思い出したように言った
「そうそう!シニア1年目にしてショート2位なんて」
そう!
基礎点の差で抜かされるのかと思った蒼だったけどエフレムさん以外、いくら基礎点が高くてもノーミスの蒼にはかなわなかった
今日は女子ショートと男子フリー
女子ショートがうちらの昼休みと被ってそうだからリアルタイムで見る予定
男子フリーはまたもや合わなさそうだからテレビで見ようと思う
「優愛も頑張ってね、フィンランド大会
2位だったってことはまだまだ可能性あるんでしょ?」
「うん!1位取れば確実、2位だと多分行ける、くらいじゃないかな〜
あっ、優菜だって1位ならゼロじゃないんだから応援してあげてね」
そう言うと
「もちろんよ!
でも、先に行くのは優愛でしょ?」
まあね
フィンランド大会には優菜はいないけど、蒼がいる
清華もいてめっちゃ心強いメンバーだけど迷惑はかけないようにしなきゃね
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
ヤバっ
まだ廊下にいるのにチャイムなっちゃった
普段なら遅刻扱いだけどほとんどの人がここにいるしどうだろ?
そんな感じで慌てて教室に戻るのだった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まもなく、着陸致しますのでシートベルトをおつけください」
そんなアナウンスは長い飛行機の旅の終了のお知らせだ
いよいよ明日からフィンランド大会
1日目は男子ショートだけで女子は明後日からだけど
この大会には現世界女王のエミリー・ウィリアムさんが出てる
そして、グランプリシリーズ第1戦で優勝した先輩の鈴木彩乃ちゃんがいる
多分、カナダ大会よりも厳しくなりそうだ
男子もベテラン選手が多かったり、日本王者の浅野弘也さんがいるから簡単には勝てないだろう
でも、シニア1年目にして3位に食いこんだ蒼なら……なんて期待もある
まあ、強い人のことを考えてたって何も変わらないから全力で勝負するだけ
「優愛、行くよ」
「はーい!」
隣に座っていた清華にそう言われてもう着陸していた飛行機から降りた
ホテルに着いて、今回は私と清華、彩乃ちゃんの3人部屋
「はあ〜!疲れた!」
そう言ってキャリーケースを引っ張ってきて座った彩乃ちゃん
しっかり者のお姉ちゃん的存在だけどほわほわしてて優しい人
「お疲れ様です
明日の公式練習のためにちゃんと休みましょう」
そう言ったのは清華
清華も1つ年上ではあるんだけど、スケート年齢が一緒だったし、私の方がクラブに入ったのが先だったこともあってタメ口なんだよね
「そうね~
今日は明日に向けて早く寝た方がいいかもね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日
朝は男子の公式練習で昼頃から私たち女子の公式練習が始まる
夜は男子ショートだからサブリンクでの公式練習が終わったあと、ホテルに戻る時間はあるよね?
時差ボケで昨日の夜はなかなか寝付けなかったけど飛行機の中で変に寝たからだろう
もともと、しっかりしてるとは言えないような生活リズムだけど
そうそう!
朝行った開会式(男子は昨日あった)で私は第3グループの4番滑走になった
清華は第1グループの6番滑走だからアップの途中でちょっとだけ見ることはできそう
彩乃ちゃんは第6グループの5番滑走だから絶対に間に合うし
ちなみに、最後はエミリーさんというボス的な2人が最後を飾ることになった
「優愛、そろそろ行ってアップしよ?」
あっ、そっか
清華は第1グループだから早いのか
私も軽く動き始めよっかな
「うん、今行く」
そう返事をしてホテルの部屋から出た
運がよく、サブリンクの近くにアップできそうな芝生があったのでその辺で軽くランニングをしていると
「あなた達日本の選手よね?」
英語で話しかけられた
え?
立ち止まって振り返るとそこにはエミリーさんがいた
「はい、橘優愛です
どうしましたか?」
「Oh~!
ユアね!この前2位だった子!
アヤノ知ってる?」
あーね!
彩乃ちゃん探してたんだ
世界女王がその辺にいる日本人に声かけるなんておかしいと思ったよ
「多分、まだホテルにいますよ?
電話かけましょうか?」
そう言うと、
「大丈夫!
これからよろしくね
同じ大会になることも多くなると思うし」
そう言って去って行ってしまった
「ちょっと優愛
エミリーさんと何話してたの?」
あっ清華
「彩乃ちゃんはって聞かれたから多分ホテルですって言っただけ」
清華は羨ましそうに
「いいなー英語できるって
他の国の子とも話し放題だもんね」
そうつぶやいた
そういえばそうだよね
周りのメンバー、優菜や夏鈴、蒼、爽汰、誠は普通に話せちゃうからあんま特別な感じしないんだよ
「まあ、大丈夫じゃない?
ここに遊びに来てるわけじゃないんだからそんなに現地の人とも周りとも話さないでしょ」
「それもそうね
私、そろそろ行くね
バックステージでストレッチとかするわ」
「行ってらっしゃい!」
私はそう言って清華の背中を見送った
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕方
いよいよ男子ショートプログラムが始まる
蒼は第2グループの2番滑走
公式練習の後少し話したら絶好調だから絶対優勝するって意気込んでいた
ジュニアの時はあんなに周りを圧倒してたのにシニアはやっぱすごいと思う
「あっ6分間練習はじまるよ」
ほんとだ
第1グループの最後の選手が退場して第2グループの選手達が一斉にリンクにとびだした
蒼はやっぱり絶好調みたいでクワドトウループも成功させている
あの出来ならGOEもたくさんプラスされるだろう
第2グループで初出場が多いにも関わらずどの選手も4回転ジャンプはバンバン成功していた
いよいよ蒼の番
音楽に合わせてすべり出した蒼は思いっきりとびあがった
クワドサルコウ+トリプルトウループ
わあ!
なんて完璧なの!
非の打ち所がないジャンプを決めてみせた
ステップもゆるやかな曲調に合わせてなめらかに進んでいく
スピンもポジションにちゃんとはまっていて最後までノーミスの完璧な演技だった
スピンなんていつもよりも速かったんじゃない?
蒼が最後のポーズをきめたときほとんど全員がスタオベだった
「すごかったね~」
「ファイナルも夢じゃないよ!」
私と清華が話していると
「それはどうかしらね」
「「え?」」
彩乃ちゃんの声がして私と清華は一緒に声をあげた
「このフィンランド大会男子も女子もすごいレベルが高いのよ
あなた達のようにジュニアから上がってきた実力者が多いのと日本選手が強すぎよね
弘也くんに洸輝くんでしょ?
2人ともすごいわよ」
洸輝くんというのは大阪の選手で坂本洸輝さん
私たちの2つ年上で一昨年の世界ジュニア王者
昨年はファイナルに出場したけれど少し前に負ってしまった怪我が悪化してシーズン後半は出ることができなかったらしい
私も一昨年の世界ジュニアで一緒に出たから分かるけど男子には珍しいスピンが上手い人だ
他にも私は分からないけど外国のすごい人もいるだろう
洸輝さんは後半の第3グループだから少し空いてしまうけど観戦はするつもり
蒼は同じクラブだから見慣れたプログラムだけど全く知らないプログラム見るのも新鮮で楽しいよね
見慣れたプログラムは細かい仕草までが音楽の表現で見入ることができて感動するんだ
次の選手はベラルーシの選手
シニア1年目の人だ
最初のトリプルアクセルでステップアウトしてしまったけど表現力がすごくてPCSが高かった
そして、しばらくすると第3グループが始まり、洸輝さんの番になった
洸輝さんの曲は『火の鳥』
まずはクワドサルコウ+トリプルトウループ
すごい!
半年のブランクがあるはずなのに完璧なジャンプ
次のほとんど助走なしでとんだトリプルアクセルは着氷後少し詰まってしまったけど
ちゃんと加点がもらえるジャンプだ
最後は男子では珍しいビールマンスピンで締めた
「すごすぎる!
蒼とどっちが高いんだろ?」
彩乃ちゃんがつぶやいた
うーん、どっちもノーミスだしな~
「あっ、出た」
出た得点は……
2位と0.06点差で1位!
うっわー!
蒼、相当悔しいだろうな
「今回シーズン、レベル高いね」
うん
男子も女子も大接戦だ
「さっ、帰りましょ
私たちも明日はいよいよ本番だからね」
彩乃ちゃんが先陣切って関係者席を立って出てってしまったので私と清華も追いかけた
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次の日
もうすぐ女子ショートプログラムの私の番が始まる
現在トップは清華
相当高い点数だからノーミスじゃないと勝てないと思う
1つ前の子の演技が終わって私はリンクに入る
「優愛~
ちょっときて」
寺田先生に言われてすべっていくと
「緊張してる?」
そういえば……
あんましてないかも
首を横に振ると
「やっぱりね
なーんか上の空っていうか
はい、集中!」
いつもより力強く背中を押されて最初の位置に送り出された
ふぅー
大きく息を吐き出してポーズをとる
音楽がなりはじめてまずは最初のジャンプ
トリプルアクセルのはずだったのになぜかトリプルルッツをとんでしまった
あっ
そっか
コンボにすればいいんだ
トリプルループをセカンドジャンプにつけてすーっと
流れるようなジャンプがとべた
その後のスピンもステップも白鳥が湖に残した波紋をイメージして綺麗に氷に後をつけていく
最後のジャンプ、トリプルアクセルも綺麗に決まって、最後はビールマンスピンでしめた
うっわーー
観客のほとんどがスタオベしてくれてるよ
丁寧にレヴェランスをしてリンクサイドに戻る
「よかったわ、優愛」
「ありがとうございます」
「でも、なーんであんなにぼーっとしてる感じがしたのかは謎だわ」
うーん
確かにずっと集中できない感じはしてた
でも、音楽が流れはじめたら勝手に体が動いてくれた
「まあ、最初にトリプルルッツとんだのは焦ったけど
リカバリーできててよかったわ」
キスクラに座って得点を待つ
少しすると得点が出た
わっー!
パーソナルベスト更新!
そっか、
トリプルアクセルを最後に持ってきたから普段のトリプルフリップよりも基礎点は高いし、点数も1.1倍になったんだ
もちろん順位も1位
まだ、後半グループが残ってるたけどひとまず安心
「はい!ミックスゾーンで取材受けてきてね
優愛、いつも行くの遅いって知り合いによく言われるから
芸能人なんだからそれくらい考えなさいよ」
はーい……
「ショートパーソナルベスト更新おめでとうございます!
手応えはどうでしたか?」
ミックスゾーンに入ると早速質問された
「ありがとうございます
最初、本当はトリプルアクセルの予定だったんですけどトリプルルッツをとんでしまって、その時は焦りました
きちんとリカバリーできてよかったです」
「最後にフリーに向けて何か一言お願いします」
それからいくつかの質問を受けていよいよ最後の質問
「確実にファイナルに行くためには優勝が必要なので、優勝目指して頑張ります!」