【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「あぁ、シュゼット嬢とずっと一緒に居たい……!」

 耳に届いたそんなお言葉に、私はアルベール様の手を振り払うことで抗議した。一瞬アルベール様が悲しそうに私に視線を向けてこられたため、私はアルベール様の手に自分の手を重ねた。……手、繋いでもいいですよって言うこと。そう視線で訴えれば、アルベール様のお顔がぱぁっと明るくなる。その後、私とがっちりと手を繋いでこられる。……少しは、仕返し成功しただろうか? 下げて上げる作戦である。

「……アルベール様、手を繋いでもいいとは意思表示しましたが、握りすぎです。痛いです、とても」
「あぁ、すみません! この手を離したくないなぁって思ってしまいまして……」
「勘弁してください。どうやって生活するのですか?」
「ずっと一緒ですね! まさに運命共同体!」
「やめてください。私はアルベール様とずっと一緒に居たら、心労で死にます」

 口ではそう言うけれど、手には少しだけ力を込めてみる。アルベール様は、リーセロット様にはっきりと私のことが好きだとおっしゃってくださった。もしかしたら、こうやって手を繋いでいるのはそのお礼……なのかもしれない。まぁ、違うかもしれないけれど。

「シュゼット嬢、このまま口づけ……」
「アルベール様って、とんでもなくポジティブですよね。口づけなんて、出来てもまだまだ先ですよ」

 私はアルベール様の手に爪を立てて、そう言う。本日手を繋ぐ許可を出したばかりなのに、口づけの許可が出るわけがないでしょう!? その抗議には、そう言う意味が含まれていた。

(……でも、やっぱり私――)

 そして、それと同時に思ってしまう。私は、アルベール様のことをそこまで嫌っていない。苦手意識も、少しだけ薄れている、と。
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