このまま抱かれてしまいたい
「おつかれさまでした、沢田さん。よかったらハーブティーどうぞ」

「ありがとうございます」

 手渡された紙コップに入った温かいハーブティーを一口啜った。

 彼は、低いソファに座る私と同じ目線になるように腰を落とした。

「今回当たらせてもらって、デスクワークが多いことで胸の筋肉が固く縮んで巻き肩になっていましたし、胸の方向に引っ張られていることで肩や肩甲骨付近にも痛みが出やすくなっていると思いました。それと、沢田さんの身体の不調はおもに骨盤の歪みからきているようです。前腿が張っていて、前腿の筋肉が緊張していることから反り腰になっていますし、歪んでいるので背中や腰にも負担がかかりやすくなっているんですね」

 ふむふむ、こうやって自分の身体について解説してもらうととても分かりやすい。私はすぐに次の予約もお願いした。回数券は、6回、9回、12回の3種類から選べたが、私は迷わず12回を選んだ。

 来たときには気に留めなかったのだが、院内の壁には様々なコースの施術料や各種案内の張り紙がしてあった。その中に、彼が整体ダイエットに取り組んだ旨の掲示も貼られていた。ダイエット前のつるんとしたお腹がダイエット後はこんなに凸凹に…。この人、脱いだらこんな細マッチョなのか…。

「お待たせしました沢田さん」

 余計なことを考えていたところに声を掛けられてドキッとした。

「こちら、回数券ですね。次回からお使いください」

「ありがとうございます」

 最初のうちは3日おき、それから週1、そして今は月1回の施術になっている。回を重ねるごとに身体の痛みは消えていき、それと反比例するかのように会えない寂しさが募っていった。いつの間にか彼に好意を抱いていたのだ。
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