乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
「約束しとく。CLOAK(クローク)ってダイニングバー、辰兄の店なんだけど、ぜんぶケリついたら連れてくよ」

「甲斐さんの?」

「宮子と来いって前から言われててさ。仁兄と俊哉と四人で」

今度こそちゃんと守るから。打つように心に届いた。

変に肝が据わっちゃったのか、壊れて麻痺しちゃったのか、また狙われるかもって恐怖心に苛まれることはなかった。

明日のことは誰も分かんない。今日しかないと思えば、今を精いっぱい生きたくなる。真にしてあげたいこと、家族や大好きな人達のためにできること、心残りがないように。

うまく言えないけど、一瞬だけ死の縁に立たされて、意味だとか優先順位だとかが変わった気もしてる。・・・上手く言えないから笑った。

「楽しみにしてる」

合間にまた口付けを盗まれて。

「・・・真」

「ん」

「死なないでね」

愛しい男の首に腕を回して顔を寄せる。啄まれる。ワルツを踏むみたいな柔らかいキス。

「宮子がカワイイおばあちゃんになるまでオレはね・・・」

その先は口の中に熔けてった。

あの襲撃犯がどうなったかなんて知らない。どうとでもなればいい、情けなんていらない。千也さんとは違う。

お生憎さま、あたしも榊も生きてる。おかげで無駄な生き方なんかできなくなった。繋がった朱い糸の結び目がずっとずっと固くなった。

地獄で吠え面かいてなさいよ?臼井宮子は大往生して、天国から鼻で嘲笑ってやるんだから。

この世でみんなと、極上って思える人生をつらぬくんだから!



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