神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
「私があんたを好きになる可能性はないのよ。だから、絆が芽生えることもない。
……私はただ、あんたの名前を【知ってる】ってだけ。声にもだせないから、心配しなくても新たな“花嫁”は“召喚”できるはずだって、ウチの小舅(こじゅうと)みたいな“眷属”が言ってたわよ」

白狼の屋敷を訪れる前、イチに確認をしたことを教えてやる。

身勝手な言い分なのは、重重承知だ。白狼が瞳子を想い続けるのが不毛なことでしかない事実を、伝えたかった。

「───……分かりました」

ややしばらくの沈黙ののち、諦観を思わせる表情を浮かべた白狼が、ニッコリと笑ってみせる。

「では、最後にお別れのハグをしてください。それであなたのことはキッパリあきらめますから」
「……あんた、本当に中身は樋村ね?」
「確証が得られました?」
「なら、私の返事も、こうよ!」

スッ……と、瞳子は立ち上がった。胡散(うさん)臭いほどに整った顔立ちの男を、冷ややかに見下ろす。

「あいにく、私は日本人なの。好きでもない男を抱きしめる習慣はないわ」
「……ああ、やっぱり、あなたは僕の好きな瞳子さんですね。
じゃあ……僕、あなたのことあきらめないままですよ?」
「勝手にすれば。もう二度と会うこともないと思うけど。
───さよなら、樋村」
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