神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
なぐさめでも励ましでもない、純粋な感謝。
それは、自分たちの選択が誰かを傷つけたとしても、貫く意味があるものだと確信するからこそ。

「……っ、……私もっ」

まっすぐな双真の言葉が、自分への嫌悪感から、ささくれだっていた瞳子の心を、嘘のように丸くしてくれる。
初めて双真と出逢ったあの日を、思いだす。

「双真が……私の声……気づいてくれて……良かった……! 私の、こと……見つけてくれて、助けてくれて、本当にありがとう……!」

言えずにいた感謝の気持ちは、二人の出逢いが偶然でなく必然であったことを、瞳子に自覚させる。

(私が喚ばれたのは、樋村が私にこの世界に来て欲しいって、望んだからだけど)

白狼の屋敷を抜け出して、ふうの力を借り、“結界”を突破すれば何かが変わるかもしれないと思った、あの一瞬が。

(本当に、私の未来を変えたんだ……)

瞳子は、双真という名の確かな幸せを抱きしめる。

“陽ノ元”に喚ばれた理由が、白い“神獣”の“花嫁”となるためであったとしても。
いま、赤い“神獣”の“花嫁”として生きている自分を、この先、恥じないでいられるよう、為せることを為そうと、心に誓った。

それこそが唯一、樋村───白狼の想いに報いることなのだと思うから。



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