神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
官にも民にも悪評が立っているという、“上総ノ国”の赤い“神獣”。この国──ひいては民のために成した善行であっても、慣例を無視すれば、いらぬ非難が待ち受けるはず。
悲しいが、人とはそういうものだ。特に、相手が高い地位に就く者──“陽ノ元”の統治者である“治天の君”であればなおのこと。面子を潰すような真似は避けねばなるまい。
そうして屋敷に戻った双真を、玄関先で瞳子が待ち構えていた。
「お帰りなさい。お疲れ様」
……物凄い笑顔で、労いの言葉を述べる愛しの“花嫁”殿なのだが。
なぜか、その笑顔が『虎太郎』のかつての乳母・早穂こと桔梗並に恐ろしい。
その桔梗ですら、双真を気遣わしげに見ながら、瞳子との夕餉の膳を用意していたくらいだ。
「……瞳子。何かあったのか?」
「それ私のセリフ」
覆い被せるように言葉尻を捉えられ、箸を置いた瞳子がジロリとこちらを見据えてくる。
「私に何か、言いたいこと、あるんじゃない?」
「……言いたいこと?」
一瞬、言葉に詰まりながらも、双真は口をひらいた。
「瞳子は」
「可愛いなぁとか、いつもの調子で茶化しても、ごまかされないわよ?」
「……そうか、うん」
茶化すつもりなどない。全く以て心から想いの丈だ。だが──。
(オレは、自分で自分をごまかしているのかもしれない)
悲しいが、人とはそういうものだ。特に、相手が高い地位に就く者──“陽ノ元”の統治者である“治天の君”であればなおのこと。面子を潰すような真似は避けねばなるまい。
そうして屋敷に戻った双真を、玄関先で瞳子が待ち構えていた。
「お帰りなさい。お疲れ様」
……物凄い笑顔で、労いの言葉を述べる愛しの“花嫁”殿なのだが。
なぜか、その笑顔が『虎太郎』のかつての乳母・早穂こと桔梗並に恐ろしい。
その桔梗ですら、双真を気遣わしげに見ながら、瞳子との夕餉の膳を用意していたくらいだ。
「……瞳子。何かあったのか?」
「それ私のセリフ」
覆い被せるように言葉尻を捉えられ、箸を置いた瞳子がジロリとこちらを見据えてくる。
「私に何か、言いたいこと、あるんじゃない?」
「……言いたいこと?」
一瞬、言葉に詰まりながらも、双真は口をひらいた。
「瞳子は」
「可愛いなぁとか、いつもの調子で茶化しても、ごまかされないわよ?」
「……そうか、うん」
茶化すつもりなどない。全く以て心から想いの丈だ。だが──。
(オレは、自分で自分をごまかしているのかもしれない)