神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
「そういうコトよ。アンタにとっての村娘が、私にとってのジンさ……ジンよ。
私だって、アンタが村の娘さん達とどうこうなってるなんて、思ってない。アンタが不誠実な人じゃないって知ってるし。
それとこれとは話が別ってコト」

だって……と。少し拗(す)ねたような口振りで、瞳子が告げる。

「双真は……私の、双真だから」

──独占欲。
互いに向け合うその感情の、なんと滑稽(こっけい)で愛しいものか。

「だから、アンタがもしジンに嫉妬してるっていうのなら、それは確かに見当違いだけど、そういう気持ちになるってコト、全く理解できないわけじゃないわ」

置かれた膳を避け、瞳子の膝が双真の方へ詰められる。翳りのない黒い瞳が、嬉しそうに細められた。

「むしろ、言ってくれて良かった。……アンタって、時々ヘンに大人で、そういう部分とか見せないし」

(なるほど。瞳子に甘えるというのは、オレ自身をさらけ出すということか)

格好のつかない自分ですら、瞳子が受け入れてくれるのだと信じて。
くすぐったいほどの幸福感が、双真の胸を満たす。

瞳子と二人で植えた紫陽花──集真藍(あづさあい)は、古く歌にも詠(よ)まれている『移ろう心を象徴する花』だ。
教養の一貫で『虎太郎』もそれら和歌集の句を読んだことがある。
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