冷徹魔王な御曹司は契約妻への燃え上がる愛を手加減しない【極上スパダリ兄弟シリーズ】
 彼が私に気づき、微かに目を見開いて一瞬驚いた顔をする。
 マズい。な、なにか言わなきゃ。
「あ……あの、私なにも見てませんし、聞いてませんから」
 何食わぬ顔で会釈して通り過ぎればよかったのに、あまりに気が動転していて、余計なことを口走ってしまう。そんな私の狼狽えぶりを見て、彼の漆黒の双眸がキラリと光った。
「盗み聞きとは悪い趣味だな」
 テノール調の美声なのに、身体がゾクゾクしてくるのはなぜだろう。
 それに、氷のように冷たい目。メガネはしていないし、前髪がサラリと落ちて普段の彼とは別人のよう。
 美しくて、尊大で……、その姿はまるで魔王――。
 周りの空気もダークで、今にも彼に食べられてしまいそうで怖かった。
「す、すみません。あの……だ、誰にも言いませんから」
 副社長の豹変ぶりに怖気づいてしまい、声がうまく出ない。
「口約束など信用できない。そうじゃないか?」
 彼は距離を詰めてきて、禍々しいオーラ全開で私に顔を寄せた。
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