ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
表面には小さなブーケのイラスト。裏に店の住所や周辺地図、電話番号が書かれた簡素なショップカードなのに、ラブレターでも渡すかのごとく照れくさかったのを覚えている。
もしかしたらあれって、私の初恋だったのかな……。
「なーにおセンチな顔してんのよ。もしかして、瀬戸山園の御曹司となにかあった?」
「えっ? う、ううん、そんなわけないじゃない」
いつまでも店先に佇んで紫陽花を眺めていたら、外出から帰ってきたカンナにからかわれる。
瀬戸山の名前に少し動揺してしまい、ごまかすように初恋の思い出について話し出した。
「実は、あるお客さんのために初めて自分ひとりで花束を作った時のことを思い出してたの。その時使ったのが紫陽花だったから」
「ああ、当時も話してくれたよね。松苑学園のイケメンでしょ?」
そういえば、花束を買ってくれた彼の高校はそんな名前だったっけ。私の話を私より詳しく覚えているカンナの記憶力に感心する。
「そうそう。今どこで何してるんだろう。名前くらい聞いておけばよかった」
「うーん、あの学園にはエリートしかいないからね。政治家か官僚、医者、弁護士。あとは、海外を飛び回る商社マンとかになってるかもね」
「残念、絶対に接点ない」