満天の君と、純白のヒメゴトを。
第一話 運命≒偶然
いつの間にか、ふとした瞬間や何をするにつけても惨めさに付きまとわれるようになっていた。
少しずつ刻まれていった’’違和感’’はやがて’’劣等感’’に姿を変えた。
「見て!樹々瀬くんだよ」
「こんな完璧主人公系イケメンがなんでうちの学校に」
「どうすればお近づきになれるの…」
周囲の人々が揃って虜になる、憧れの的の美男子にも振り返ることさえできなくなった。
いつからだろう。
’’私なんて’’という、申し訳なさと羞恥心が入り混じった感情が頭にこびりついて離れなくなったのは。
私だって、最初は純粋な女の子だった。
少女漫画やおとぎ話のような甘い恋が誰にでも用意されていると本気で思う7歳。
私は’’私’’という物語の主人公でありヒロインであり、いつか白馬の王子様が迎えに来てくれると信じて疑わない10歳。
中学生になったんだから私だってそろそろきっと…と望みを抱く13歳。
周囲の色恋沙汰に敏感になり、自分の立場に薄々勘付き始める14歳。
それでもまだ夢を見ていたい15歳。
そして高校2年目を迎えた16歳。
「好きです!」昼休み、柔らかな春の木漏れ日が降り注ぐ廊下の一角、そして目の前には爽やかな好青年。
「俺と付き合ってください」
そんな彼にはにかみながら手をとるのは、もちろん私ーーではなく。