満天の君と、純白のヒメゴトを。
ガチャっ、と明らかに空気を読まないブリキの音が鳴り響く。発生源は、もちろん私。
「すみません………」
とてつもなく気まずい空気が流れる。
冷や汗をかく男子生徒、固まる女子生徒、とてもじゃないけど顔を上げられない私、汚水入りバケツと雑巾を添えて。
ロマンチックな告白シーン(ただし赤の他人の)が一体どうしてこんな展開になってしまったのか。
全ては4限の体育が授業担当者欠席の影響で何故か体育館の掃除になったことから始まった。
授業が終わり、道具の洗浄・片付けのために水道を目指す私。ここで昼食時の混雑を避けるためと人気のない所を選らんだことが致命的な間違いだったなんて、当時はまだ知る由もない。
並々注がれた水を溢さないよう全神経集中してたんですよ、という言い訳もそこそこに。
一つのことしか頭にない人間が異様な雰囲気を察知できるわけもなく。
結果、私は告白現場に乱入してしまったのだ。しかも、2人の間に割り込む形で。
「本っ当に申し訳ありません!」
「えっ、あ、いや…」
「無茶な申し出なのは承知の上、もしよろしければ私はいなかったものとして続きをどうぞっ」
歪な三角形から脱しこの場から消えてしまいたい一心で、私は頭を垂れたまま足早にその場を後にする。
現実を知らざるを得ない16歳。私、繭菜ひとみは無味乾燥な日々を送っていた。
「くふっ、うはははははは」
「ちょっと、嬉しそうに爆笑しないでくれます?」
「ちがうちがう、これは嘲笑」
「なおさら酷いよ」
教室に戻った私は、失態の一部始終を中学来の友人の水崎桃に洗い浚い話す。桃は普段のクールさが嘘のように、やっぱり笑い転げる。
言わなきゃよかった…と背中を丸めてお弁当の白米をつつく私を、桃は机に頬杖を突きながら見下ろす。
「さすがひとみ。絶妙な首の突っ込み加減」
「我ながら最低最悪。もう後は無事に付き合っていただき笑い話として昇華してくれる日が来るのを祈るしかな…うっ」
「何。急に胸抑えて」
「今気付いたんだけどね。あの2人、1年生だったのね。スリッパの色的に」
「んで?」
「………『付き合う』って何?」
眉間に皺を寄せる桃を向かいに、私は双肩を震わせながら両手を机に着く。
「冷静に考えて入学して、出会って数週間の男女が付き合うって何!?こちとら恋愛経験皆無なんですがっ!」
またしても「ぶふっ」と吹き出す親友の姿が眼前に現れる。
「つまり、後からじわじわと恋愛コンプレックスが抉られてきたと」
「的確に言語化しないで。虚しすぎる」
組んだ両腕の上に突っ伏し脚をバタつかせる私の心は荒みに荒んでいた。
「すみません………」
とてつもなく気まずい空気が流れる。
冷や汗をかく男子生徒、固まる女子生徒、とてもじゃないけど顔を上げられない私、汚水入りバケツと雑巾を添えて。
ロマンチックな告白シーン(ただし赤の他人の)が一体どうしてこんな展開になってしまったのか。
全ては4限の体育が授業担当者欠席の影響で何故か体育館の掃除になったことから始まった。
授業が終わり、道具の洗浄・片付けのために水道を目指す私。ここで昼食時の混雑を避けるためと人気のない所を選らんだことが致命的な間違いだったなんて、当時はまだ知る由もない。
並々注がれた水を溢さないよう全神経集中してたんですよ、という言い訳もそこそこに。
一つのことしか頭にない人間が異様な雰囲気を察知できるわけもなく。
結果、私は告白現場に乱入してしまったのだ。しかも、2人の間に割り込む形で。
「本っ当に申し訳ありません!」
「えっ、あ、いや…」
「無茶な申し出なのは承知の上、もしよろしければ私はいなかったものとして続きをどうぞっ」
歪な三角形から脱しこの場から消えてしまいたい一心で、私は頭を垂れたまま足早にその場を後にする。
現実を知らざるを得ない16歳。私、繭菜ひとみは無味乾燥な日々を送っていた。
「くふっ、うはははははは」
「ちょっと、嬉しそうに爆笑しないでくれます?」
「ちがうちがう、これは嘲笑」
「なおさら酷いよ」
教室に戻った私は、失態の一部始終を中学来の友人の水崎桃に洗い浚い話す。桃は普段のクールさが嘘のように、やっぱり笑い転げる。
言わなきゃよかった…と背中を丸めてお弁当の白米をつつく私を、桃は机に頬杖を突きながら見下ろす。
「さすがひとみ。絶妙な首の突っ込み加減」
「我ながら最低最悪。もう後は無事に付き合っていただき笑い話として昇華してくれる日が来るのを祈るしかな…うっ」
「何。急に胸抑えて」
「今気付いたんだけどね。あの2人、1年生だったのね。スリッパの色的に」
「んで?」
「………『付き合う』って何?」
眉間に皺を寄せる桃を向かいに、私は双肩を震わせながら両手を机に着く。
「冷静に考えて入学して、出会って数週間の男女が付き合うって何!?こちとら恋愛経験皆無なんですがっ!」
またしても「ぶふっ」と吹き出す親友の姿が眼前に現れる。
「つまり、後からじわじわと恋愛コンプレックスが抉られてきたと」
「的確に言語化しないで。虚しすぎる」
組んだ両腕の上に突っ伏し脚をバタつかせる私の心は荒みに荒んでいた。