満天の君と、純白のヒメゴトを。
「お怪我はありませんか繭菜さん」
「いえ私は、樹々瀬くんこそっ」
「はい大丈夫で…ん。名前」
「名前?」
「今…俺の名前…」
礼儀正しい敬語の中に時折見え隠れする幼い雰囲気に疑問を抱きつつ口を開く。
「樹々瀬くんのこと、知ってるので」
あれだけ目立ってれば誰でも…。
待って。不審者扱いされてたらどうしよう。
しかし、私の不安とは裏腹に、目に映るのは「そっか…」と耳先を桃色に染める姿だった。
何かを隠すかのように掌で覆われた口元が仄かに緩んでいる気がしなくもない。
ん?というか名前と言えば、彼が私の名前を認識している方が変じゃ?
続々と追加される謎に首を傾げる。その間に樹々瀬くんは我に返ったようで、一礼すると足早に階段を駆けていく。
「え…逃げられた………?」
結局、その日は委員長の仕事どころではなかった。
翌日の放課後、持ち越した仕事を片付けようと急いで帰り支度をし各クラスを練り歩いていく。その甲斐あり、残すは生徒会分だけになった。
生徒会役員と言えば泉くん。見知らぬ人との対面続きで気疲れしていたから、会えるのが純粋に嬉しい。
穏やかな心持ちで生徒会室の扉に手をかける。
「だーかーらぁーっ何回言ったらわかるんだよっ!」
ノブを引こうとしたまさにその時、室内で怒号が飛ぶ。
この声、泉くん?
「だってわかんないもんはわかんないんだよ!」
「初めて教えるならいいよ?これ3回は説明したんだけど。全く同じ説明を3回も!」
「仕方ないじゃん。勉強苦手なんだから!」
「開き直るな。忘れるな。覚えろ。呼吸するよりも先ず暗記しろ」
「もうヤダ。もっと優しくして、怖い」
「はい~?どの分際で文句言ってんだ、このバカ」
「バカって言った方がバカだよ!バカ太陽」
「二秒前の己の発言すら忘れてんじゃねぇよマジで」
男子同士の口論がドアの隙間から漏れてくる。
修羅場?喧嘩?止める?そもそも立ち聞きもよくないんじゃ…。
一人あたふたしていると、ガタっと勢いよく椅子を引く音が鳴る。
「もう拗ねた!!太陽のあほっ」
拗ねるのって自己申告制なんだ…なんて思っていると急に視界に光が差し込む。
扉が中から開けられるのに合わせて、ノブを掴んでいた腕ごと引きずり込まれる。
「わあっ」
「え」
「何だ!?」
三者三様の反応の中、私は前に立つ人物の胸に顔を埋めざるを得なかった。なんかこの体勢既視感が…。
偶然というべきか何かしらの力が働いているというべきか。見上げた先の光景に私はまたもや既視感を覚える。
「樹々瀬くん…?」
愕然とする私。天井を仰ぐ泉くん。そして青ざめる樹々瀬くん。室内には他に誰もいない。
新種の怪奇現象ではない、よね。多分恐らく。
ということは…泉くんの口喧嘩相手は…駄々っ子の如く喚いていた男子は、あのクールで静謐、みんな憧れの樹々瀬くんだった?
思わぬ真実に脳の処理速度が追い付かない。
理想と現実の狭間で揺れる16歳。
私は、どうやらとんでもない秘密に首を突っ込んでしまったようです…。
「いえ私は、樹々瀬くんこそっ」
「はい大丈夫で…ん。名前」
「名前?」
「今…俺の名前…」
礼儀正しい敬語の中に時折見え隠れする幼い雰囲気に疑問を抱きつつ口を開く。
「樹々瀬くんのこと、知ってるので」
あれだけ目立ってれば誰でも…。
待って。不審者扱いされてたらどうしよう。
しかし、私の不安とは裏腹に、目に映るのは「そっか…」と耳先を桃色に染める姿だった。
何かを隠すかのように掌で覆われた口元が仄かに緩んでいる気がしなくもない。
ん?というか名前と言えば、彼が私の名前を認識している方が変じゃ?
続々と追加される謎に首を傾げる。その間に樹々瀬くんは我に返ったようで、一礼すると足早に階段を駆けていく。
「え…逃げられた………?」
結局、その日は委員長の仕事どころではなかった。
翌日の放課後、持ち越した仕事を片付けようと急いで帰り支度をし各クラスを練り歩いていく。その甲斐あり、残すは生徒会分だけになった。
生徒会役員と言えば泉くん。見知らぬ人との対面続きで気疲れしていたから、会えるのが純粋に嬉しい。
穏やかな心持ちで生徒会室の扉に手をかける。
「だーかーらぁーっ何回言ったらわかるんだよっ!」
ノブを引こうとしたまさにその時、室内で怒号が飛ぶ。
この声、泉くん?
「だってわかんないもんはわかんないんだよ!」
「初めて教えるならいいよ?これ3回は説明したんだけど。全く同じ説明を3回も!」
「仕方ないじゃん。勉強苦手なんだから!」
「開き直るな。忘れるな。覚えろ。呼吸するよりも先ず暗記しろ」
「もうヤダ。もっと優しくして、怖い」
「はい~?どの分際で文句言ってんだ、このバカ」
「バカって言った方がバカだよ!バカ太陽」
「二秒前の己の発言すら忘れてんじゃねぇよマジで」
男子同士の口論がドアの隙間から漏れてくる。
修羅場?喧嘩?止める?そもそも立ち聞きもよくないんじゃ…。
一人あたふたしていると、ガタっと勢いよく椅子を引く音が鳴る。
「もう拗ねた!!太陽のあほっ」
拗ねるのって自己申告制なんだ…なんて思っていると急に視界に光が差し込む。
扉が中から開けられるのに合わせて、ノブを掴んでいた腕ごと引きずり込まれる。
「わあっ」
「え」
「何だ!?」
三者三様の反応の中、私は前に立つ人物の胸に顔を埋めざるを得なかった。なんかこの体勢既視感が…。
偶然というべきか何かしらの力が働いているというべきか。見上げた先の光景に私はまたもや既視感を覚える。
「樹々瀬くん…?」
愕然とする私。天井を仰ぐ泉くん。そして青ざめる樹々瀬くん。室内には他に誰もいない。
新種の怪奇現象ではない、よね。多分恐らく。
ということは…泉くんの口喧嘩相手は…駄々っ子の如く喚いていた男子は、あのクールで静謐、みんな憧れの樹々瀬くんだった?
思わぬ真実に脳の処理速度が追い付かない。
理想と現実の狭間で揺れる16歳。
私は、どうやらとんでもない秘密に首を突っ込んでしまったようです…。


