唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
「はぁぁぁぁ。もう、しょうがないですね」
尊厳くんはメガネごと手で覆うと、唯都様の前に進んだ。
呆れ色に染まる視線。
到達点は唯都様じゃない。
お姫様抱っこをされている私に、ガンと突き刺さっている。
えっと……なぜ?
「琉乃さん、これを飲んでください」
……え?
抑揚のない声のあと、私の口に何かが放り込まれた。
タブレットみたいに小粒。
甘いコーティングが溶けた部分から、苦みが染み出てくる。
「大量の水で流し込む。これ、薬を飲むときの基本です」
ポケットに突っ込んであったペットボトルを手に取った尊厳くんは、おっとり笑顔をうかべた。
スマートにキャップを開け、ニコニコ笑顔ははなまる満開。
でも目だけは笑っていなくて、容赦なく私の口に水を注ぎこんでくる。