振り向けば、キス。
終章 終わりの始まり


見上げる高い冬の空に、高原はふう、と息を吐いた。
外気にさらされたそれは一瞬白く形作って、すぐに溶け込んでしまう。

あれから――図らずも自分が放火犯の疑いをかけられてから、2ヶ月が過ぎた。その後、自分たちの間でまことしやかに囁かれていた噂を頼りに、同級生でもある雨宮波樹の家に押しかけたのが、まるで遠い過去のようであり、昨日のことでもあるように思えた。

そう、本当に流れるような、と言うよりかは巻き込まれ破壊されていくような日々が自分たちの街を襲ったのだ。それが自分の中の時の流れをおかしくさせている。



高原は、あの日以来、2ヶ月ぶりに、雨宮神社の長い階段を登っていた。
けれど、あの日々、ずっと当たり前に続くだろうと思っていた華々しい騒々しさは、もうこの家には残っていなかった。

自分があの時頼りにしてきた天野楓も、波樹、そして楓がとても大切にしていた少女、雨宮氷沙もこの街から消えてしまった。
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