振り向けば、キス。
気がついたら、ずっと自分にくっついていた小さかった弟は、身長も、心も自分より強くなっていた。

護っていたつもりが、護られているように思うことが増えた。

でも本当は、昔からずっと自分の隣にい続けてくれている半身に、癒され、護られていたのかもしれない。


楓ばかりを頼りにしてしまって、依存してしまっているつもりで、きっと自分は弟にも相当依存しているのだと氷沙は思った。


小さかった弟が、成長期を迎えて、楓の身長を越してしまう。そんな長い季節を3人で過ごしていることは、氷沙にとって、かけがえのないものだった。


「なっちゃんは、まだまだこどもだよ。だから私がしっかりしなくちゃ。
――ねぇ、なんでこんなことになったの?高原くんの話を聞いてただけじゃ、ないの?」


それでも、自分の口から飛び出す言葉は。波樹の保護者然としたものだった。
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