転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~
「ちょっと中身を見せて」

 動揺に逸る気持ちを抑えながら、貸してもらったレフィーの本を開く。

「才能の無駄遣いとはこういうことか……」

 完璧だ、完璧過ぎる。歪んだ線を誤魔化した跡や、間違えた身長差をどうにかしようと不自然に石の上に乗っている場面もそのまま正確に再現されている。
 あまりの神業に、私は今度は夢中の方の意味で逸る手で頁を捲った。四十七頁目までそうしていて。

「‼」

 そこでハッとして最後から二頁目をバッと開いた私は、同じくらいバッと本を閉じた。

「え、これ貸したら陛下は最後から二頁目も実践すると思う?」
「するんじゃないでしょうか」
「魔王なの⁉」
「魔王ですね」
「そうでした‼」

 そういうニュアンスで聞いたわけではなかったけれど、そうでした! レフィーが実践してきたときは『魔王降臨』という感じだったので、ついそんな例えをしてしまった。
 しかしあれを陛下がやっちゃう……? レフィーの場合は「いつかやらかすと思っていました」とマスコミに話す周辺住民よろしく、どこか納得してしまったが。こと陛下となると、その証言内容も「まさかあの人があんなことをするなんて」に変わるというもの。一言で言うと、ギャップがすごい!

「では貸しますね」
「だ、駄目!」

 レフィーの台詞に、私は二重の意味で叫んだ。
 彼をこのまま行かせてなるものかという静止と、危うく陛下で新刊のネームを書いてしまいそうだった自分への戒めと。

「私は貸すなら『恋するあなたへ ~初めてのデート編~』だと思うの!」

 レフィーの服の裾をくいくい引っ張りながら、私は彼に提案した。以前彼に音読しないで欲しいと思ったタイトルを、自らそうすることになろうとは。何という運命の皮肉……。

「ふむ。確かにそちらの方が適してそうです」
「そうでしょう、そうでしょうとも」
「ではそちらの写本を貸しましょう」

 よし! そっちの写本もあるんかいと心の中でツッコミつつも、よし!

「もう一冊の方は、また折を見て貸すということで」

 レフィーが言いながら、サッとソファから立ち上がる。次いで歩きながらいつもの亜空間収納から本を取り出す。その無駄の無い洗練された所作に見蕩れていた私は、遅れて気が付いた。今部屋を出て行ったばかりの彼が最後に言い残していった、爆弾発言を。

「結局貸すの⁉」

 ワンテンポどころかツーテンポ以上も遅れた私の訴えを、最早影も形も無いレフィーが聞いているわけもなく。どころか彼のことだから、一秒でも早く帰ってくるべく風の速さで陛下の元へ向かっている可能性大である。
 私は事態が完全に手遅れであることを悟り、天井を仰いだ。

「陛下のお嫁さん、超逃げてぇ……」

 -END-
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