【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「……そういうところ、直した方が良いと思う」
「私、これで苦労したことがないので」
苦労したことがないというよりも、人と深く関わることを避けてきたという方が正しいのだろうが。内心で苦笑を浮かべながらそんなことをぼやけば、ルーシャンは「まぁ、いいや」とだけ言い、「そのエイリーン嬢なんだけれどさ」と話を戻してきた。ちなみに、彼の視線も本に向けられた。
「しつこいんだよね」
「まぁ、しつこいとは、何が?」
「大体察しろ。……俺たちみたいな人間には、日常的なこと」
ルーシャンがそう言うので、ドロシーは「あぁ、言い寄られているのか」と瞬時に理解した。ドロシーだって男性に言い寄られることは少なくない。むしろ、引きこもりになる前はそれが日常だった。そのため、そういう考えに向かうのに時間はかからなくて。
「言い寄られているのですね」
「そう。……なんでも、俺に一目惚れしたらしくて」
普通の人間がそんなことを言えば、嫌味と受け取られるのだろう。しかし、生憎と言っていいのかルーシャンやドロシーのような整いすぎた容姿を持つ人間にとって、それは普通のことで。側にいるダニエルとリリーの考えなど知りもしない二人は、本に視線を向けたまま会話を続ける。
「エイリーン嬢、王城にも来るし、会わせろって喚くし、ろくな子じゃなくてさ」
ルーシャンのその言葉に、ドロシーは内心で「一時期の私か」と内心で思っていた。ルーシャンと婚姻した当初、ドロシーはエイリーンと同じような行動をしていた。とは言っても、その気持ちに好意など一ミリもない。あるのは「薄情な妻と思われたくない」と言う思惑だけ。