玉響の花雫    壱
薄暗い空間にさっきよりも目が慣れてきたのか、滲んだ瞳の先に見えた筒井さんの怒った顔に涙が溢れてしまう


「ごめんなさ‥‥ッ‥‥私は筒井さんのことが‥大切で、こんなふうにそばにいられるのが
今でも信じられないくらいで、夢なんじゃ‥ないかって‥‥‥。初めてなんです‥‥こんなに
人を好きになったのも‥‥ヒック‥だから‥‥手を繋いだり、抱きしめられたり‥‥き、キスも
全部経験がないから馬鹿みたいに勘違いしちゃうんです。今日のことも今もぜんぶ‥‥だから‥‥‥」


涙が止まらなくて両手で顔を覆う。その瞳に見つめられるのもツラくて逃げられないからこうするしか‥


『フッ‥‥ほんと‥‥誰かのために自分が何かをしてあげたいなんて思う日が来るとはな‥』


えっ?

私の手を取ると、涙をテイッシュで丁寧に拭いてくれ、滲んだ景色の向こうに、今度は優しく笑う筒井さんが見えた。


『もう泣くな‥‥。あの日‥‥涙を流しながら俺に伝えてくれた気持ちがまだ変わらずあるなら、俺はこれからもお前のそばにいたいと思ってる。』


筒井さん‥‥

『勘違いなんてもうしなくてもいい。俺はそのままのお前がいいから。』


一生分の勇気を振り絞って思いを伝えた人が、今‥目の前で私に思いを伝えてくれている‥‥


叶わなくても想うだけなら楽しかった。そばに居られれば嬉しかった‥‥。


だから‥そんな私なんかに思いを伝えてくれる筒井さんが夢なのかなって思えてしまう‥‥


『何もしないって言ったけど、治療だけしとくか。』

「えっ?‥ンッ!!」


私の頬を包み涙を丁寧に親指で避け、優しく唇に深くキスが落とされると、離れた後、名残惜しいような寂しさで筒井さんを見上げてしまう。

『フッ‥‥さぁ寝るぞ。』

「‥‥もうしないんですか?」


えっ!?なんておかしなことを言ってしまったんだろうと慌てて顔を背けると、もう一度両手を抑えられ、至近距離で筒井さんが見下ろして来た。


『何?お前もっとしたかったの?‥それなら答えないとな?』


「えっ!?あ‥‥何言ってるんですか!?
 ンンッ!!」


深く重ねられた唇に呼吸をするのも下手くそな私は答えるだけで精一杯だけど、角度を変えて何度も深く舌が絡まると、体の力も抜けてしまい疲れていたのか暫くするとウトウトとして目が閉じてしまった



『フッ‥‥続きはまた今度な。』


遠くで筒井さんの声が聞こえた気がしたけど、温かい温もりが心地よくて目を開けることが出来なかった
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