玉響の花雫 壱
誰もいないのを確認してから
古いカートリッジを取り出すと
小さいポリ袋に入れて新しい
カートリッジをそこに2つ入れた。
ゴミやインク漏れをしないように、
必ずポリ袋を持参しているのだ。
『邪魔だから早く退いてもらえる?』
えっ?
カートリッジの引き出しを
閉め終わったところで、コピー室に来た
人物がドンっとぶつかって来たときに
使用済みのインクが袋から出てしまい
着ていたブラウスに黒いシミが
出来てしまった
「あの、何するんで‥‥」
『は?何!?忙しいからどいてって
言っただけでしょ?モタモタしてる
貴方の方が悪いんじゃない?』
「‥ッ‥申し訳‥ありません。」
髪の毛を綺麗に巻かれた人物は、
以前エントランスで仕事帰りに出会った
確か八木さんという人だったと思う
『クス‥‥汚いわね‥‥。
仕事の邪魔よ、早く部署へ
戻ったら?』
「ッ‥‥失礼します。」
急いでゴミを纏めると、
お辞儀をしてその場を去る
お腹の辺りに出来てしまった
黒いインクのシミを隠すようにして
経理部を出ると、エレベーターを
使わずに非常階段の扉を開けた。
‥‥‥怖かった。
前にエントランスで睨まれた時も
怖そうな人だなとは思ったけど、
至近距離で睨まれたことを思い出す
だけで体がブルっと震えてしまう
カーディガンを羽織ったら
なんとか隠れるかもしれない‥‥
ここにずっといたいけど、仕事が
まだ沢山あるから早く戻らないと‥‥
立ち上がって階段を降りようとしたら、
後ろのドアが突然開いたことで
ビックリしてまた体が震える
『‥‥こんなところで何して‥』
「あ‥‥お、お疲れ様です。
筒井さんこそどうされたんですか?」
『経理から出た時に井崎さんがここに
走ってくのを見たから‥‥経理で
何かあったのか?』
ドクン
「い、いえ何もないです‥‥。
運動不足だから階段で降りようと
思っただけです。」
胸元を見られると嫌だったので
両手で隠すようにしてお辞儀をした
ここは会社だし、業務中だから
こんなことで忙しい筒井さんの
時間を割きたくない。
「し、失礼します。」
『ちょっと待て。何隠してる。』
えっ?
肩に手を掛けられて行くのを
止められてしまうと、筒井さんが
背後から目の前に来て立ち、
力を入れていた腕を簡単に
引き剥がしてしまった。
『お前‥‥』
「あ、な、なんでもないって
言ったじゃないですか。
インク‥‥インクが溢れて
汚れちゃっただけです‥‥」
古いカートリッジを取り出すと
小さいポリ袋に入れて新しい
カートリッジをそこに2つ入れた。
ゴミやインク漏れをしないように、
必ずポリ袋を持参しているのだ。
『邪魔だから早く退いてもらえる?』
えっ?
カートリッジの引き出しを
閉め終わったところで、コピー室に来た
人物がドンっとぶつかって来たときに
使用済みのインクが袋から出てしまい
着ていたブラウスに黒いシミが
出来てしまった
「あの、何するんで‥‥」
『は?何!?忙しいからどいてって
言っただけでしょ?モタモタしてる
貴方の方が悪いんじゃない?』
「‥ッ‥申し訳‥ありません。」
髪の毛を綺麗に巻かれた人物は、
以前エントランスで仕事帰りに出会った
確か八木さんという人だったと思う
『クス‥‥汚いわね‥‥。
仕事の邪魔よ、早く部署へ
戻ったら?』
「ッ‥‥失礼します。」
急いでゴミを纏めると、
お辞儀をしてその場を去る
お腹の辺りに出来てしまった
黒いインクのシミを隠すようにして
経理部を出ると、エレベーターを
使わずに非常階段の扉を開けた。
‥‥‥怖かった。
前にエントランスで睨まれた時も
怖そうな人だなとは思ったけど、
至近距離で睨まれたことを思い出す
だけで体がブルっと震えてしまう
カーディガンを羽織ったら
なんとか隠れるかもしれない‥‥
ここにずっといたいけど、仕事が
まだ沢山あるから早く戻らないと‥‥
立ち上がって階段を降りようとしたら、
後ろのドアが突然開いたことで
ビックリしてまた体が震える
『‥‥こんなところで何して‥』
「あ‥‥お、お疲れ様です。
筒井さんこそどうされたんですか?」
『経理から出た時に井崎さんがここに
走ってくのを見たから‥‥経理で
何かあったのか?』
ドクン
「い、いえ何もないです‥‥。
運動不足だから階段で降りようと
思っただけです。」
胸元を見られると嫌だったので
両手で隠すようにしてお辞儀をした
ここは会社だし、業務中だから
こんなことで忙しい筒井さんの
時間を割きたくない。
「し、失礼します。」
『ちょっと待て。何隠してる。』
えっ?
肩に手を掛けられて行くのを
止められてしまうと、筒井さんが
背後から目の前に来て立ち、
力を入れていた腕を簡単に
引き剥がしてしまった。
『お前‥‥』
「あ、な、なんでもないって
言ったじゃないですか。
インク‥‥インクが溢れて
汚れちゃっただけです‥‥」